最新記事

世界の最新医療2021

心臓発作の再発を恐れて性行為を控えると、逆に死亡率が高まる:学術研究

DON’T BE AFRAID TO HAVE SEX

2021年3月31日(水)11時47分
カシュミラ・ガンダー
セックスレス(イメージ)

WAVEBREAKMEDIA/ISTOCK

<心臓発作を経験した人でも、セックスをタブー視するのはむしろ危険との調査結果が>

心臓発作の経験がある人の場合、再び発作が起きるのではないかという不安から、セックスを控えることが多いかもしれない。しかし、2020年9月に学術誌「ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・プリベンティブ・カーディオロジー」に発表された研究は、異なる可能性を指摘している。

論文著者らは、1992~93年にかけて初めて心臓発作を経験した495人を調査。これらの被験者たちは最初の心臓発作後と、その3~6カ月後の2度にわたって面談を受け、そこで最初の心臓発作の前後にどれくらいの頻度でセックスをしていたかを質問された。なお自慰行為など、セックス以外の性行為は調査の対象外とされた。

最初の面談を受けた時は全員が65歳未満で、平均年齢は53歳だった。また面談の22年後には、彼らのうち43%が亡くなっていた。

このインタビュー調査で分かったのは、心臓発作の後に以前と同じか、より多くのセックスをしていた人は、減らすかやめた人に比べて死亡率が低かったということだ。セックスの回数が多かった人たちは、主に癌など、心血管疾患とは関係のない疾患の罹患率が低かったためだ。

心臓発作を起こす以前に、少なくとも週1回セックスをしていた人は73%を占めたが、3~6カ月後には60%にとどまった。「心臓発作後のセックスの頻度が、以前と同じか増えた」という患者は53 %で、残りの患者は、セックスの回数を減らすか、完全にやめていた。

セックスは健康の指標

以前と同じか、より多くのセックスをしていた人は、セックスをやめるか減らした人に比べて年齢が若く、自らの健康状態を良好と認識し、鬱病のリスクが低く、また社会経済的地位が高い傾向にあった。

論文の共著者で、テルアビブ大学のヤリブ・ガーバー教授は、セックスは健康の指標であり、心臓発作後すぐにセックスを再開することは、患者が自分自身を健康で、機能的で、若く、エネルギッシュであると見なすかどうかに影響を及ぼす可能性があると指摘している。

「セックスの頻度を維持または増加させた群で延命効果が観察された理由として、それに伴う体力の向上や、配偶者との関係の強化、また、心臓発作直後のショックから数カ月以内に『立ち直る』精神的能力を備えていたことなどが考えられる」とガーバーは話す。一方、自らの健康状態に自信がない患者は、セックスを再開したり、癌検診などを受けに行ったりする傾向が低い可能性がある、とガーバーは指摘する。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

独クリスマス市襲撃、容疑者に反イスラム言動 難民対

ワールド

シリア暫定政府、国防相に元反体制派司令官を任命 外

ワールド

アングル:肥満症治療薬、他の疾患治療の契機に 米で

ビジネス

日鉄、ホワイトハウスが「不当な影響力」と米当局に書
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 5
    トランプ、ウクライナ支援継続で「戦況逆転」の可能…
  • 6
    「私が主役!」と、他人を見下すような態度に批判殺…
  • 7
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 8
    「オメガ3脂肪酸」と「葉物野菜」で腸内環境を改善..…
  • 9
    「スニーカー時代」にハイヒールを擁護するのは「オ…
  • 10
    「たったの10分間でもいい」ランニングをムリなく継続…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 3
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 4
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 5
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 8
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 9
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 10
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命を…
  • 7
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 8
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 9
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中