最新記事

海底

海に沈んだ古代文明? 沖縄の巨大海底ピラミッド、地質学者たちの議論の的に

2021年3月30日(火)17時00分
青葉やまと

神秘的な姿を一目見ようとダイバーたちが訪れる...... HISTORY Asia-YouTube

<沖縄・与那国島付近の海底に、サッカー場ほどの大きさの巨大な構造物が眠る。その正体をめぐる議論は、発見から30年以上が経った現在も絶えない......>

1987年、与那国島でスキューバ・ダイビングのインストラクターとして活動する新嵩喜八郎氏は、新たなダイビング・スポットを探していた。島南部の新川鼻の岬付近に潜った新嵩氏は、海底に拡がる光景に目を疑う。澄んだ海中に、ピラミッドにも似た構造物が忽然と姿を現したのだ。

水底からそそり立つその物体は、まるで巨大な一枚岩の周囲を階段状に加工したかのようだ。広さはサッカーフィールド丸々1面分、高さは8階建てのビルほどはあろうか。

よく見ると頂上部は広場のような平らなスペースになっており、周囲には高低差をつけながら複数の長方形の区画が連なっている。整然と区切られたこれらのエリアは階段状の構造で結ばれており、小高い丘を切り拓いて造った都市を思わせる。

正確な大きさを測定したところ、最も長い東西方向で約100メートル、南北は約50メートルに及び、高さは25メートルほどに至ることが判明した。一帯は水深25メールほどであり、上端の一部は水面上に突き出ている。第一海丘と呼ばれるこの構造体とは別に、近接して複数の同様の構造物が海底で確認された。これらは今日、「与那国海底遺跡」あるいは「与那国島海底地形」として知られている。

その発見以来、古代都市を想起させる海丘群は人々の興味を惹き、海外でも幾度となく話題となってきた。英BBCは今年3月、「日本のミステリアスな海底『都市』」と題し、「日本の琉球諸島沖の波の下で、ピラミッドのような奇妙な一連の構造物が、1987年の発見以来、地質学者とダイバーたちを魅了してきた」と紹介している。

過去にはオーストラリアでも、大手ニュースサイト『ニュース・コム・エーユー』が、「日本のアトランティス? 未解決の水面下のミステリー」として紹介している。こちらも人工的な建造物であった可能性に触れる内容だ。

5000年前の文明説

遠い昔に滅んだ都市のようにも見える海底構造物は、果たして本当に文明の痕跡なのだろうか。専門家の見解は分かれている。

琉球大学名誉教授で海洋地質学者の木村政昭氏は、文明の痕跡であるとの説を強く支持する人物のひとりだ。教授は20年以上を費やし、100回以上の潜水調査に臨んできた。最初に現地に赴いて以来、5000年前に栄えた都市の痕跡であるとの説を一貫して支持している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米自動車関税、年6000億ドル相当対象 全てのコン

ビジネス

米、石油・ガス輸入は新たな関税から除外=ホワイトハ

ワールド

トランプ米大統領の相互関税、日本は24% 全ての国

ビジネス

米関税強化、新興国社債の36%に「重大な」影響
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中