交通違反の日本人に警官が賄賂要求 いまだ不正横行のインドネシア、国家警察報道官が謝罪
国家警察報道官が謝罪する事態に
この一連のやり取りが写された動画がSNS上で話題になったことをうけて、8月21日には国家警察のアルゴ・ユウォノ報道官が「こうした事実が起きて申し訳ない」と謝罪したうえで「当該の警察官2人は処分を受けた」と処分内容には言及せずに警察として対応したことを明らかにしたと地元メディアが伝え、一気にこのニュースはインドネシア人の間でも拡散した。
なぜこの動画が「事件発生」から半年以上も経過した8月に入ってから注目を集めるようになったのかはいまだにわからないが、インドネシア国家警察幹部もジョコ・ウィドド大統領の閣僚秘書もすでにこの動画の存在を8月中旬には把握していた。
このうち国家警察幹部は「すでに当該警察官を配置転換して警察監察組織が調査している。とても恥ずかしい警察官の行為である」と話している。
ポストコロナの観光業への影響を心配
閣僚秘書や国会議員の間でもこの動画の存在は広まっており、あまりに反響が大きいことに加えてコロナ禍で現在は海外からの観光客受け入れを禁止しているバリ島だが、観光業が島の主要産業であり、今後観光客受け入れが再開された際の外国人観光客に与える影響などを考慮して、国家警察やその内部組織である監察組織までが動いて対応しているものとみられている。
1998年に民主化の波で崩壊したスハルト長期独裁政権の時代には交通警察官による運転手への違反摘発厳格化と「お目こぼし料要求」は日常茶飯事だったとされている。
しかし次第に民主化が進み、インドネシア社会全体がこうした「賄賂文化」に嫌悪感を示すようになり、国家汚職撲滅委員会(KPK)が創設されて公務員の汚職摘発に国民の支持と期待が高まるようになっていた。しかし地方や末端の警察官などにはまだまだかつての「賄賂習慣」が残っているのも事実。
なおこの事案についてバリ・デンパサールにある日本総領事館でもこの映像に関する情報を認知しており、邦人保護の立場から現地バリ州警察と連携を密にして類似事案の防止に努めたいとしている。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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