タイ民主化求める若者デモ 政府はコロナ対策の規制も活用して締め付け強化
コロナ対策を利用した取り締まり
バンコク地元警察は8月5日、3日のデモを含めたこれまでのデモを組織したり主催したりした活動家など5人を事情聴取したことを地元メディアなどに明らかにした。聴取に踏み切った理由が「3密状態となる大規模な集会を開いた」というコロナ感染対策上のルール違反の容疑としている。
ところが聴取を受けた一人であり、3日のデモで演説をしたアノン氏についてはコロナ関連容疑と同時にこれまでのデモや集会で触れた「王室改革」「不敬罪撤廃」などの主張に関しても事情を聞かれたことを「発言と活動の停止を求められた」とアノン氏自身が述べて示唆している。
警察当局はこのようにデモや集会に対してその政治的スローガンへの直接的介入をなるべく避けて、コロナの感染拡大防止対策を利用する形でプレッシャーをかける作戦を取っているものとみられており、プラユット政権も若者の動向にはかなり神経を使っていることがうかがわれる状況だ。
プラユット首相はコロナ禍への対応に全力投球する一方で、学生ら若者を中心に広がる気配をみせている反プラユット政権、不敬罪撤廃を含む王室改革、軍制の色が濃く残る議会の解散と憲法の改正などを掲げる運動への対処も求められており、難しい政権運営が求められている。
タイの人々に「微笑み」が戻ること、そして海外からの観光客が再びタイ各地の観光地に戻ることを祈りたい。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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