混乱のインドネシア、感染対策より政治優先の知事が規制緩和 邦人は日本料理店「闇営業」で対立
闇営業の日本料理店に賛否両論も
一方、これまで「飲食業は宅配か持ち帰りに限定して営業可能」というPSBBの制限があったにも関わらず、外部からは見えないようにして裏口などから日本人客を迎えて密かに営業していた日本食レストランなどには、制限緩和を受けて「これで堂々と営業ができる」と歓迎する声が上がっている。
こうしたPSBBの規制期間中に「闇営業」していた日本食レストランに関しては、ジャカルタ在住の日本人や日本に一時帰国していると思われる日本人が、ネット上の掲示板で賛否両論を激しく戦わせていた(6月5日現在470件の投稿)。
「規制逃れは問題だ」「インドネシアのルールに従え」という批判派と「経営維持のため止むを得ない措置」「来店する日本人客がいる以上問題ない」などの擁護派が激論を交わしていたが、次第に誹謗中傷合戦の様相を呈し、日本人の間でも社会制限に対する不満やうっ積が飽和状態になっていることを暗にうかがわせていた。
社会制限の完全解除に向けた移行期間としての今回の緩和措置では、レストランや事務所などは通常の半数のお客、スタッフでの再開を認めるという「50%緩和」が当面適用される。だが市場やモールでは人数制限には限界があり、各店内は50%だが一歩外に出れば雑踏、人混みという状況が早くも市内の各所で出現している。
数字からみても緩和は時期尚早明らか
ジャカルタが規制緩和を発表した6月4日から7日にかけての3日間で首都の感染者に占める死者はわずか6人に留まっている。しかし感染者数は343人も増加している。1日平均で110人となるが、6日から7日の1日間で163人増加と1日の感染者数としては過去最多を記録している。その結果感染者・死者共にインドネシア全土の中でジャカルタは依然として最大規模となっているのだ。
こうした状況について国立インドネシア大学公衆衛生学部疫学科のトリ・ユニス・ワヒョノ学科長は「ジャカルタの状況はまだ感染防止策の緩和には早すぎる。感染拡大の危険は依然として存在する」と述べて、アニス州知事の判断に異を唱えている。
これは6日に開催されたオンライン上での討論会「規制緩和後の新常態の準備はできているか」でのトリ学部長の発言をテンポ紙が伝えたものだ。
トリ学部長はジャカルタでは最近の数字として1週間に約400人の新規感染者が確認されていることを指摘して「1週間の新規感染者数が100人前後に減少しない限り安全とは言えないし、ゼロになって初めて完全に安全であるとみなすことができる」との見解を示した。
要するに専門家から見ればジャカルタの現状は「完全に安全」どころか「安全」にも程遠い状況にあると指摘し、結果としてアニス州知事の規制緩和という判断に疑問を示したのだ。