最新記事

アメリカ社会

ロックダウン解除で試されるアメリカの「ウィズコロナ」計画

Life After Lockdown

2020年5月14日(木)16時05分
フレッド・グタール(本誌サイエンス担当)

新型コロナの感染拡大による外出制限でタイムズスクエアからも活気が消えた EDUARDO MUNOZ-REUTERS

<米政府は経済活動の再開に舵を切り始めたが、国民が「普通の日常生活」に戻れるわけではない。ロックダウン解除後、ウイルスとの戦いは新たな局面に入る>

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止のため、ロックダウン(都市封鎖)など厳格な措置が続くアメリカでは、早期の経済活動再開を求める声が高まり、怒りの矛先が州政府に向けられている。

ミシガン州の州都ランシングでは4月30日、銃を持ったデモ隊が州議事堂に押し入った。通りでは労働者や中小企業の経営者が、州知事に経済活動の再開を求めるプラカードを掲げ、抗議を込めた車のクラクションが鳴り響いた。

バージニア、ケンタッキー、オハイオ、ノースカロライナ、ユタなど全米の多くの州で抗議行動が続いている。

アメリカでは4月中旬から、コンピューターモデルの計算上は感染拡大の「ピーク」を迎えつつあると言われるようになった。ニューヨークのアンドルー・クオモ州知事は4月13日に、州内の死者数は「恐ろしい水準」ではあるが実質、横ばいになっているとし、外出制限などの「賢明な行動を続ける」という条件付きながら「最悪の時期は脱した」と語った。

経済活動の早期再開を主張するドナルド・トランプ米大統領は、「私たちの戦いは新しい局面を迎えている。次は『アメリカを再開する』戦いだ」と述べた。

誰もがロックダウンの解除を待ちわびているが、今の段階で明確に分かっていることが1つある。解除が来週になろうと来年になろうと、新型コロナウイルスは息を潜めて待ち構えているということだ。

経済活動再開は少しずつ

ロックダウンの目的は感染拡大を遅らせることであり、救急医療の負担を減らして時間を稼ぐ対策だ。いつ、どのように解除するかを考える際に重要なのは、いかに死者数を減らすかではなく、短期間に死者数が急増することをどのように防ぐかだ。

既に州政府や民間の研究機関が経済活動の再開に向けて枠組みを考えているが、そこには共通認識がある。ウイルスを無力化する方法が科学的に解明されるまで、私たちの生活は正常な状態には戻らないということだ。

ワクチンの開発には最短でも1年はかかるとみられている。重症患者を救えるような新しい治療法の確立も、数カ月はかかりそうだ。

既に示されている「ロックダウン後」の行動計画の大半は、厳密には「普通の日常生活」に戻れるわけではない。外出時にはマスクを着用する。一部の店舗は「社会的距離」の対策を施して再開するが、大人数の集会は禁止。バーの営業は難しそうだ。メジャーリーグは、再開直後は空っぽの球場で試合をする。

「徐々に活動を再開する」ことになるだろうと、米食品医薬品局(FDA)前長官のスコット・ゴットリーブは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中