最新記事

アメリカ社会

ロックダウン解除で試されるアメリカの「ウィズコロナ」計画

Life After Lockdown

2020年5月14日(木)16時05分
フレッド・グタール(本誌サイエンス担当)

magw200514_withcorona2.jpg

トランプはマスク工場を視察、経済活動再開に意欲を示したが(5月5日) TOM BRENNER-REUTERS

社会的な交流が増えれば、ウイルスは再活性化するだろう。ハーバード大学のマーク・リプシッチ教授(疫学)の研究グループは、ロックダウン解除後のCOVID-19の流行予測をコンピューターで解析した。

サイエンス誌に掲載された論文によると、現在の規制が緩和されれば、流行は年内にほぼ確実に再燃する。夏の暑さでウイルスの活動が一時的に弱まるかもしれないが、ニューヨークやミシガンなど米北部の州で間違った安心感が広まれば、夏以降に再び感染者数が急増し、回復傾向にある現在より深刻な状況に陥りかねない。

再び大惨事にならないよう、医師たちは濃厚接触者を追跡する方法で、早期に感染拡大の芽を摘もうとするだろう。接触者の追跡には、患者の血液中のウイルスの有無を調べるPCR検査と、ウイルスに対する抗体の有無(免疫があるかどうかの基準となる)を調べる抗体検査が必要だ。

濃厚接触者の追跡は地域レベルで実施する必要があるため、これらの検査を安い費用で数多く実施し、迅速に結果を出すことが求められる。ニューヨーク大学のポール・ローマー教授(経済学)によれば、アメリカでは全国民を対象に2週間に1回、1日当たり2000万件以上の検査が必要だという。

そうした大規模な検査はすぐには無理だ。検査は始まったばかりで「各地の結果が出るまで数週間はかかる」と、リプシッチはみている。

検査と追跡が駄目なら、感染拡大を阻止するには他人と一定の社会的距離を保つしかない。リプシッチの研究チームは社会的距離戦略だけで感染拡大の再燃を抑えるシナリオを模索。永続的ロックダウンは誰も望まないので、断続的ロックダウンについてもシミュレーションを実施した。

「社会的距離」が日常に

保健当局が人口全体の感染率をモニターし、感染者数が再び一定水準に達すれば改めて社会的距離の規制を課す。3~4月のロックダウンは緩和されても、数カ月後には第2弾が実施され、さらに第3弾、第4弾......と続くだろう。

ワクチンや有効な治療法がない以上、2022年までロックダウンと解除を繰り返し、十分な数の人間がウイルスに対する抗体を獲得し、最も弱い人々をウイルスから守れる状態にする──つまり「集団免疫」を獲得する必要がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英利下げ支持には雇用と消費の軟化必要=グリーン中銀

ワールド

「麻薬運搬船」への複数回攻撃はヘグセス長官が承認=

ワールド

トランプ氏のMRI検査は「予防的」、心血管系良好=

ビジネス

再送-インタビュー:USスチール、28年実力利益2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 2
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    600人超死亡、400万人超が被災...東南アジアの豪雨の…
  • 9
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 10
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中