ロックダウン解除で試されるアメリカの「ウィズコロナ」計画
Life After Lockdown
社会的な交流が増えれば、ウイルスは再活性化するだろう。ハーバード大学のマーク・リプシッチ教授(疫学)の研究グループは、ロックダウン解除後のCOVID-19の流行予測をコンピューターで解析した。
サイエンス誌に掲載された論文によると、現在の規制が緩和されれば、流行は年内にほぼ確実に再燃する。夏の暑さでウイルスの活動が一時的に弱まるかもしれないが、ニューヨークやミシガンなど米北部の州で間違った安心感が広まれば、夏以降に再び感染者数が急増し、回復傾向にある現在より深刻な状況に陥りかねない。
再び大惨事にならないよう、医師たちは濃厚接触者を追跡する方法で、早期に感染拡大の芽を摘もうとするだろう。接触者の追跡には、患者の血液中のウイルスの有無を調べるPCR検査と、ウイルスに対する抗体の有無(免疫があるかどうかの基準となる)を調べる抗体検査が必要だ。
濃厚接触者の追跡は地域レベルで実施する必要があるため、これらの検査を安い費用で数多く実施し、迅速に結果を出すことが求められる。ニューヨーク大学のポール・ローマー教授(経済学)によれば、アメリカでは全国民を対象に2週間に1回、1日当たり2000万件以上の検査が必要だという。
そうした大規模な検査はすぐには無理だ。検査は始まったばかりで「各地の結果が出るまで数週間はかかる」と、リプシッチはみている。
検査と追跡が駄目なら、感染拡大を阻止するには他人と一定の社会的距離を保つしかない。リプシッチの研究チームは社会的距離戦略だけで感染拡大の再燃を抑えるシナリオを模索。永続的ロックダウンは誰も望まないので、断続的ロックダウンについてもシミュレーションを実施した。
「社会的距離」が日常に
保健当局が人口全体の感染率をモニターし、感染者数が再び一定水準に達すれば改めて社会的距離の規制を課す。3~4月のロックダウンは緩和されても、数カ月後には第2弾が実施され、さらに第3弾、第4弾......と続くだろう。
ワクチンや有効な治療法がない以上、2022年までロックダウンと解除を繰り返し、十分な数の人間がウイルスに対する抗体を獲得し、最も弱い人々をウイルスから守れる状態にする──つまり「集団免疫」を獲得する必要がある。