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ネットの「送料無料」表記に「存在を消されたようだ」と悲しむ人たちがいる

2020年4月28日(火)11時25分
印南敦史(作家、書評家)

それを定義づけるとすれば、給与が安く、3K(きつい・汚い・危険)で、労働環境が悪く、人気のない仕事ということになるのかもしれない。少なくとも、当のトラックドライバー以外の人たちが、そういう偏見を持っている可能性は低くないだろう。

しかし、その定義は曖昧なものであり、"底辺"だと決めつける根拠としても曖昧な部分が多い。

だからこそ著者は、他人の仕事を「底辺職だ」とするのは職業差別以外のなにものでもないと主張している。


トラックドライバーの職は過酷だ。傍から"底辺職"と思われるのも、原因の多くはこの過酷さにある。
 その図体の大きさゆえに、走っていても停まっていても邪魔扱いされ、荷主に指示されるがまま手荷役作業(手で一つひとつ荷物を積み降ろすこと)し、眠い目をこすって長距離運転。これらの運行状況はデジタコ(デジタルタコグラフ)で会社に逐一管理され、荷物事故を起こせばその荷の「買取り」までさせられるケースもある。(97ページより)

当然ながら、運転中は命の危険と隣り合わせの状態にある。下手をすると加害者にもなりかねず、常に緊張を強いられることにもなる。そういう意味でも、体力はもちろん精神的にも過酷な仕事であるわけだ。

だが"トラックドライバー=底辺職"というイメージは、そうした労働環境だけによって形成されるものではない。世間が無意識のうちにトラックドライバーに対して行っている「軽視」や「職業差別」が、彼らを"底辺"に追いやっているケースもあるのだ。

その例として著者が挙げるのが、ECサイトなどでよく目にする「送料無料」という表記だ。それは過酷な労働環境で働くドライバーの努力あってこそ成り立っているわけだが、そんな事実を意識している消費者は多くないだろうと指摘している。


 少ないながらも実際発生している輸送料・送料に対して、「送料弊社負担」や「送料込み」など、他にいくらでも言い方がある中、わざわざこの「無料」という言葉が使われることに、「存在を消されたような感覚になる」と漏らすドライバーもいる。(98ページより)

我々消費者は通販やネットで商品を購入しようとする際、そこに「送料無料」の文字があるかどうかを多少なりとも意識するはずだ。しかし、その裏にトラックドライバーの努力があることまでには、なかなか考えが及ばないものでもあるのだろう。

また、交通事故を起こした際の処遇の違いにも、著者は同じように"大きな引っかかり"を抱くという。

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