新型コロナウイルスは発明の母? 世界で感染防止のアイデア製品次々と
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家具メーカー、DDBのドア開閉用「衛生(ハイジーン)フック」。提供写真(2020年 ロイター/Nat Pinte & Steve Brooks/DDB Work)
英国のロンドン西部にある家具メーカー、DDBの経営者兼デザイナーのスティーブ・ブルックさんは先週、車を運転しながら工房に向かう途中で新型コロナウイルスのことがふと頭に浮かび、一体どうやったらドアのノブにさわらずに開けることができるかを考えた。
そこでブルックさんが発明したのが、ドア開閉用の「衛生(ハイジーン)フック」だった。衛生フックは十分ポケットに収まるほどのサイズで、小さな穴がない素材なので掃除も簡単だ。
これは新型コロナ感染拡大を防ぐために編み出された数百に上る新製品のほんの1つにすぎない。世界中の家具メーカーから人工知能(AI)ソフトウエア開発業者まで、既存製品に一工夫を加えたり、一から開発を手掛けたりして、新型コロナ流行に負けずに自宅や病院、あるいは隔離場所での生活環境を改善できる発明品が次々に登場している。
こうした取り組みは長年、大手企業の「専売特許」と言える分野だった。試作品設計から量産品製造まで時間をかけられず、資金力やそれなりの設備が必要だからだ。実際、足元でもフォードやエアバス、LVMHなどは自社の工場を消毒液やマスクなど新型コロナ対策に欠かせない医療品の生産ができるように素早く切り替えている。
ただ現在は、3Dプリンターや機能性の高いソフトウエアが存在しているという点が、従来との決定的な違いだ。つまり大手だけでなく小規模企業でも、より迅速に製品を生産することが可能になった。
米国のカリフォルニア州に拠点を置く製品設計企業CADクラウドの創設者マッケンジー・ブラウン氏は「3D関連資源を使って積極的に(新型コロナ対策の)役に立ちたいと思っている人が数多くいるのは間違いない」と語る。
そうした中で2週間前、CADクラウドは新型コロナ危機を乗り切る各種製品を募集する1カ月のコンペを開始。これまでの約65件の申し込みには、手首に装着する殺菌スプレーや、ボタンを押すために指の部分だけにはめる手袋、タクシー利用者が手を使わずにドアを開けられる装置などが含まれている。
新型コロナの流行で人々の衛生意識が高まっているので、一部の製品は今の危機が収まった後も生き残れるかもしれない。