新型コロナウイルスは発明の母? 世界で感染防止のアイデア製品次々と
既存技術を応用
新興企業は自社の技術を応用しようとしている。
例えば米国のシアトルでは、ジョセフ・トレスさん、マシュー・トレスさん兄弟と、友人が経営するスライトリー・ロボットは元来、皮膚のかきむしりや爪かみといった精神的な自傷行為を抑えるためのリストバンドを開発していたが、先月地元で初の新型コロナによる死者が出たと報道されると、設計を手直し。手を顔に近づけると警告音が鳴るスマートバンドを新たに製造した。
ルーマニアのロボットソフト企業Uiパスは、アイルランド首都ダブリンの病院で看護師が時間のかかる新型コロナの検査結果のデータ入力や仕分け作業をしなくても済む方法を見つけ出した。同社は、他の病院でも実現できると期待している。
また米国で学校やカジノの銃探知システムを手掛けるAI企業、Scyllaも、中国で新型コロナ感染が伝えられたのをきっかけにこの分野に目を転じた。AIを駆使した従来の検知ソフトを改良し、人間の体温測定をして熱があれば警報を発する仕組みを導入したのだ。最高技術責任者のAra Ghazaryan氏は、病院や空港、企業の事業所といった場所で使うことが可能で、ある中南米の政府からすでに5000件のライセンス生産の注文を獲得していると明らかにした。
第2次大戦以来の技術革新
世界的な社会経済の混乱は、しばしば新製品や技術革新をもたらす。
今活発化している人々の創意工夫は、最終的には第2次世界大戦時に匹敵する規模になるかもしれない。当時も企業や政府、科学者が取り組んださまざまなプロジェクトがその後の社会にも持続的な影響を及ぼした。1つ例を挙げれば、ロケット誘導に使われた技術は初の人工衛星打ち上げにつながり、やがて人類を月に送り込んだ。
自身も発明家で英国発明家協会の共同創設者のケーン・クラマー氏は今後について、「何千とは言わなくとも何百もの新しいアイデアが出てくるのは確かだ。誰もがウイルスと闘うためだけに『武器』を取りつつある。これは世界的な戦争だ」と強調した。
多くの企業は新製品を寄付するか、赤字覚悟で販売している。CADクラウドのコンペに持ち込まれた製品の設計図は無料でダウンロードできる。もっとも一部の企業にとっては、こうした新製品の販売が、新型コロナ大流行で失われた本業の収入を幾分穴埋めしてくれる可能性もある。
(Josephine Mason記者 Peter Henderson記者 Luiza Ilie記者)
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