最新記事

アメリカ経済

米就労者の6割がロックダウン失業1カ月で困窮する──5人に1人は1週間

Nearly 60 Percent of U.S. Workers Won’t Be Able to Meet Their Basic Needs.

2020年4月2日(木)14時45分
アレクサンドラ・ハッツラー

働けなくなったら1週間で困窮する人も Kevin Lamarque-REUTERS

<普段から貯蓄ゼロの綱渡り生活のため、家賃も払えず食べ物も買えなくなる>

アメリカの就労者の6割近くは、新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウン(都市封鎖)で仕事ができない状態ば続けば、1カ月(あるいは、それより早く)で最低限の生活もできないほど経済的に困窮することが調査で分かった。

人事のプロの団体、米人的資源管理協会(SHRM)が4月1日に発表した調査結果によると、就労者の58%が30日も自宅隔離が続けば、家賃や光熱費を払えなくなり、食べる物すら買えなくなるという。

しかも就労者の5人に1人は外出制限が1週間続いただけで生活できなくなると答えている。

「生活への影響は甚大で、人々が感じる不安やストレスはいくら強調してもし足りない」と、SHRMのジョニー・テーラー・ジュニア会長兼CEOは言う。多くのアメリカ人は「給料日から給料日まで、ギリギリ持つかどうか」の綱渡り生活をしている、というのだ。

「データから明らかなように、このパンデミック(世界的な大流行)は2008年の金融危機よりもいろいろな意味で克服困難だ。いずれ回復するにせよ、非常に厳しい状況になると、多くの人がみている」

SHRMは3月12日から16日までに492人のアメリカの就労者を対象に調査を行なった。誤差は±4.34ポイント。集計にはアメリカの人口構成を反映するよう加重した数字を用いた。

中小企業がつぶれる

調査は3月27日に史上最大規模の2兆ドルの景気刺激策が米議会で成立する前に実施された。この経済対策により、就労者の生活困窮がいくらか「軽減される」可能性があると、SHRMは認めている。

2兆ドルのうち、2500億ドルは失業保険の拡大に充てられる。給付対象が広げられ、州政府が支給する失業保険に週600ドルが上乗せされることになる。さらに、家計支援として年収7万5000ドル以下の大人には1人に付き1200ドルの一時給付金が支給され、年収1万5000ドル以下の夫婦には2400ドルが支給される。

SHRMの調査では、中小企業が受ける甚大な痛手も浮き彫りにされた。アメリカの中小企業の半数は外出制限がまる1カ月続くと、従業員に給与を払えなくなる。中小企業の調査は3月13日から16日まで512の事業者を対象に実施されたが、この段階で半数以上の事業者が概ね10〜30%の売上減を見込んでいた。

景気刺激策では、従業員への給与の支払いを担保するため、中小企業への融資に3500億ドル近くが充てられる。スティーブン・ムニューシン財務長官は3月30日、中小企業向け融資は4月3日から実施するとFOXビジネス・ネットワークに述べた。

<参考記事>新型コロナ対策、「日本式」の特徴と評価
<参考記事>「コロナ失業」のリスクが最も高い業種は?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏、州裁判官選挙に介入 保守派支持者に賞金1

ワールド

米テキサス・ニューメキシコ州のはしか感染20%増、

ビジネス

米FRB、7月から3回連続で25bp利下げへ=ゴー

ワールド

米ニューメキシコ州共和党本部に放火、「ICE=KK
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中