新型コロナウイルスは人類への警鐘──感染症拡大にはお決まりのパターンがある
THIS OUTBREAK IS A WAKE-UP CALL
感染症の対策ではスピード感が求められる。国際社会ができる限りの態勢を整え、感染の拡大を抑制・制御できるようにすること。新たな脅威に気付くのが遅ければ、それだけ感染が広がり患者が増える。
医療現場でも政府レベルでも、一貫した指導力と対応能力、連携、説明責任が問われる。透明性のある対応の第一歩は、普通とは違う症例を報告することに始まる。たいていは医療従事者や医療ボランティア、知識のある市民が報告する。そうした報告が増え、いよいよアウトブレイクが疑われるとなったら、原因を速やかに特定して効果的な対応につなげなければならない。
必要な事柄の多くは、昔ながらの公衆衛生の基本を忠実に実行することにある。一方で、科学技術の進歩で最新の手段を投入することも必要だ。感染の有無を短時間で判定する試薬も欲しい。
症状の出ていない人からも感染が広まる場合は、感染予防は難しくなる。だからこそ初期に把握することが一層重要になる。一部の国では、新しい病原体に触れる可能性がある農家や、生きた動物を売買する市場の従業員について、地域主導の検査体制を整えている。人の症状だけでなく、動物の病気や死亡事例についても報告を義務付けている。
アメリカには民間のインフルエンザ追跡サービスがある。登録ユーザーが毎週、インフルエンザの疑われる症状の有無を報告し、それに基づいて全国の流行状況を把握する。現在ではコロナウイルスについての質問も追加され、問題意識を高めている。SNSや機械学習、人工知能(AI)などを活用すれば、アウトブレイクを未然に防ぐチャンスが増えるかもしれない。
パンデミックを完全に防ぐことは将来の課題だ。現在の私たちは、まだ新型ウイルスの感染拡大を防ぐのに必要な力を持ち合わせていない。それでも新たな感染症の出現に関与する重大な要因の特定や、発生地域での即応体制などについては格段の進歩を遂げてきた。
新たな感染症がどこで、なぜ発生するのか。その点に対する理解を深め、共有していかない限り、いつかまた新型ウイルスが猛威を振るうことになる。その時になって驚き、目を覚ますのでは遅い。
<本誌2020年2月18日号掲載>
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【参考記事】知っておきたい感染症との闘いの歴史──次のパンデミックを防ぐために
2020年3月10日号(3月3日発売)は「緊急特集:新型肺炎 何を恐れるべきか」特集。中国の教訓と感染症の歴史から学ぶこと――。ノーベル文学賞候補作家・閻連科による特別寄稿「この厄災を『記憶する人』であれ」も収録。