クルーズ船の隔離は「失敗」だったのか、専門家が語る理想と現実
A DAUNTING BUT DOABLE MISSION
いずれにせよ、クルーズ船の乗客は下船し、最後の乗務員・船長の下船をもってオペレーションは完了だ。喉元過ぎて熱さを忘れる前に、今回の事案をきちんと分析・評価して、この教訓を日本そして世界の将来に役立てなければならない。
また、このような事態に国際法上、誰がどのように対処すべきかを明らかにし、国際社会が一丸となって取り組む仕組みをつくるべきだ。日本のリーダーシップに期待したい。
新型肺炎との闘いはまだ終わっていない。これからが感染症を終息させるか、拡大させるかの正念場である。「見えない敵」の手の内は大体見えた。世界に流行する他の感染症に比べ、特段怖い相手でもない。
正しく怖がり、冷静に判断し、この危機をオールジャパンで乗り越えなければならない。私も母国のため、できる限りの協力をしたい。
(筆者はジュネーブ在住。元長崎大学熱帯医学研究所教授。これまで国立国際医療センターや国連児童基金〔ユニセフ〕などを通じて感染症対策の実践・研究・人材育成に従事してきた。近著に『世界最強組織のつくり方──感染症と闘うグローバルファンドの挑戦』〔ちくま新書〕)
<2020年3月10日号「緊急特集:新型肺炎 何を恐れるべきか」より>
2020年3月10日号(3月3日発売)は「緊急特集:新型肺炎 何を恐れるべきか」特集。中国の教訓と感染症の歴史から学ぶこと――。ノーベル文学賞候補作家・閻連科による特別寄稿「この厄災を『記憶する人』であれ」も収録。