最新記事

新型コロナウイルス

クルーズ船の隔離は「失敗」だったのか、専門家が語る理想と現実

A DAUNTING BUT DOABLE MISSION

2020年3月4日(水)16時00分
國井修(グローバルファンド〔世界エイズ・結核・マラリア対策基金〕戦略投資効果局長)

大規模災害対策に必須のCSCA、すなわちCommand & Control(指揮、統制)、Safety(安全)、Communication(情報伝達)、Assessment(評価)が十分にできていたのかは、きちんと分析・検討する必要がある。

知識はあっても経験がない。戦略、活動目標や実施計画、作業手順書を作りたくても時間がない──。そんな場合にどうしたらよいか。具体的な方策を考える必要がある。

一般に、タテの指揮命令系統が明確でない、機関や組織間のヨコの連携がうまくいかない、統制が取れない、というのは危機管理では致命傷となる。ここで私が重要と思っていることは「見える化」だ。

誰がどのような役割と権限を持ち、どのような命令・指揮で動くのか、また誰と誰がどのような連携や協力を必要とし、どのような統制を必要としていくのか、できるだけ単純明快に可視化することだ。

初めから完璧なオペレーションは難しい。毎日課題をチェックし、改善を加えながら、よりよいものに進化させていくのだ。

では、最終的にこの介入は成功したのだろうか。クルーズ船で700人以上が感染したと聞くと、それは失敗だ、誰のせいだ、となる。実際に、このことで、身を粉にして働いた災害派遣医療チーム(DMAT)や厚生労働省の職員などに罵詈雑言を浴びせる人々も多いらしい。

これには、データに基づいた冷静な分析と判断が必要だ。第3回の「新型コロナウイルス感染症専門家会議」(2月24日開催)に提出された資料を見る限りでは、検疫介入を始めた2月5日以降の発症者の多くは潜伏期を考慮すると介入前に感染したもののようで、感染者数の推移からは介入の効果は認められる。

専門家によるさらなる分析や議論を期待しているが、少なくとも私が途上国で経験した「コントロールに失敗したアウトブレイク」の様相ではなく、この過酷な環境でよく頑張ったと言える。

ただし、乗客の感染拡大には効果を示しながら、昼夜を問わず乗客を支えてきた乗務員、命懸けで乗客の命を守ろうとした検疫官や医療従事者、政府関係者などが感染したのは残念だ。必死に働き、非難・中傷を受け、その上に感染。まさに過酷なミッションであった。その労はねぎらわれるべきだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、米関税による経済や物価影響を議論 3月理事

ビジネス

ステランティス、米工場で900人一時解雇へ 関税発

ビジネス

米貿易赤字、2月は6.1%縮小 前倒し購入で輸入は

ビジネス

米新規失業保険申請6000件減の21.9万件、労働
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 2
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のために持ち込んだ?
  • 3
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 6
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中