最新記事

ジェンダー

リケジョは意外におトクなキャリア選択

2020年2月12日(水)16時10分
舞田敏彦(教育社会学者)

理系の女性比率で、日本は世界で最も立ち遅れている skynesher/iStock.

<日本の女子の理系志望率は男子と比べてかなり低いが、収入を考慮すればキャリアとしては有利な選択>

STEM(科学、技術、工学、数学)分野の女性比率を高めることが目標として掲げられているが、現状では日本は世界でも最も立ち遅れている。2017年の統計によると、大学の当該分野の入学者の女子比率は18%で、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中では最低だ。加盟国の平均は30%で、最高のニュージーランドでは42%にもなる。

理系職の志望率にはジェンダー差があり、それは早い時点から生じている。日本の中学校2年生の理系職志望率は男子が31%、女子が18%で、13ポイントもの開きがある(IEA「TIMSS 2015」)。「女子が理系なんて......」という風潮があり、理系職に就いている女性を見ることもないので、「女子が理系に進むのはおかしいのではないか」という思い込みを持たされている。

アメリカでは男子が60%、女子が55%だ。中学生の半分以上が理系職を希望し、ジェンダー差も小さい。比較の対象を広げると、性差が逆の国すらある。横軸に女子の志望率、縦軸に女子と男子の差分をとった座標上に、37の国を配置すると<図1>のようになる。

data200212-chart01.jpg

横軸を見ると、女子生徒の理系職志望率は、エジプトの86%から日本の18%まで幅広く分布している。縦軸で性差をみると「男子>女子」の国が多いが、その反対の国もある。エジプト、イラン、オマーンといった国では女子の理系職志望率がべらぼうに高く、男子を上回っている。

いずれもイスラム圏で、女性への宗教的統制が強い国だ。しかし国策として科学技術教育に力が入れられ、この分野では実力主義が徹底しているので、高い給与を得られるという期待が持てるのだろう。

日本は対極の左下にあり、女子の理系職志望率が低く、男子との差も大きい。だが給与の点で言うと、女子は文系と理系でかなり差が出ている。25~54歳の大卒有業者を在学時の専攻により文系と理系に分け、年収とのクロスをとると<図2>のようになる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ

ワールド

米、ロシアが和平合意ならエネルギー部門への制裁緩和

ワールド

トランプ米政権、コロンビア大への助成金を中止 反ユ

ワールド

ミャンマー軍事政権、2025年12月―26年1月に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 3
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMARS攻撃で訓練中の兵士を「一掃」する衝撃映像を公開
  • 4
    同盟国にも牙を剥くトランプ大統領が日本には甘い4つ…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 10
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 8
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中