最新記事

仮想通貨ウォーズ

仮想通貨ウォーズの勝者はリブラか中国か――経済の未来を決する頂上決戦の行方

THE RACE IS ON

2020年1月25日(土)17時30分
カーク・フィリップス(公認会計士)

PHOTO ILLUSTRATION BY WILLIAM POTTERーSHUTTERSTOCK, WIT OLSEWSKIーSHUTTERSTOCK (COINS)

<ビットコイン、リブラ、デジタル人民元......三つ巴の覇権争いを制するのは誰か。ドル建て一辺倒に代わる、次の金融システムの姿を探る>

去る2019年10月23日、フェイスブックの創業者マーク・ザッカーバーグはいつものTシャツを脱いでスーツに身を包み、米連邦議会の証言席で神妙にしていた。6月に発表した新規格の仮想通貨「リブラ」の構想が壮大過ぎて世の中を騒然とさせ、とりわけアメリカの規制当局を大いに刺激したせいで、証言を求められる事態となったからだ。

やむなく彼は「米政府当局の承認が得られるまで」は勝手に動かないと述べ、2020年前半に予定していたリブラの立ち上げを延期すると約束した。しかしクギを刺すのも忘れなかった。

「中国も同様の構想の実現に向かっており、その動きは速い」と述べ、こう警告した。「アメリカも変わらなければ、世界の金融界で指導的な立場を失いかねない」

いわゆる仮想通貨や暗号通貨の代名詞となったビットコインだけではない。今や資金力でたいていの国家をしのぐグローバル企業や、中国をはじめとする複数の国家が、伝統的な通貨に取って代わるデジタル通貨の導入を急いでいる。

来るべき新たな金融秩序で覇権を握るのは、果たして誰か。

先行しているのは、もちろん10年以上の実績を誇るビットコインだ。決して万能ではないが、中央集権的な組織に頼らなくても金融システムが構築できる。

斬新な暗号化技術とブロックチェーンと呼ばれるシステムを用いて、ビットコインは政府(中央銀行)の裏書きがなくても国際的な金融取引が可能である──ことを見事に証明した。結果、同様にブロックチェーンの技術を使った仮想通貨が続々と生まれ、グローバル金融の世界に新風を吹き込んでいる。

通貨の発行と管理こそ主権の証しと信じる政府や中央銀行も、今や座視してはいられない。気が付けば中国政府とその中央銀行(中国人民銀行)も、しばらく棚上げにしていたCBDC(中央銀行が発行するデジタル通貨)の発行に向けて動きだし、リブラの先を行こうとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ミシガン大消費者信頼感11月確報値、71.8に上

ワールド

レバノン南部で医療従事者5人死亡、国連基地への攻撃

ビジネス

物価安定が最重要、必要ならマイナス金利復活も=スイ

ワールド

トランプ氏への量刑言い渡し延期、米NY地裁 不倫口
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    巨大隕石の衝突が「生命を進化」させた? 地球史初期…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中