仮想通貨ウォーズの勝者はリブラか中国か――経済の未来を決する頂上決戦の行方
THE RACE IS ON
PHOTO ILLUSTRATION BY WILLIAM POTTERーSHUTTERSTOCK, WIT OLSEWSKIーSHUTTERSTOCK (COINS)
<ビットコイン、リブラ、デジタル人民元......三つ巴の覇権争いを制するのは誰か。ドル建て一辺倒に代わる、次の金融システムの姿を探る>
去る2019年10月23日、フェイスブックの創業者マーク・ザッカーバーグはいつものTシャツを脱いでスーツに身を包み、米連邦議会の証言席で神妙にしていた。6月に発表した新規格の仮想通貨「リブラ」の構想が壮大過ぎて世の中を騒然とさせ、とりわけアメリカの規制当局を大いに刺激したせいで、証言を求められる事態となったからだ。
やむなく彼は「米政府当局の承認が得られるまで」は勝手に動かないと述べ、2020年前半に予定していたリブラの立ち上げを延期すると約束した。しかしクギを刺すのも忘れなかった。
「中国も同様の構想の実現に向かっており、その動きは速い」と述べ、こう警告した。「アメリカも変わらなければ、世界の金融界で指導的な立場を失いかねない」
いわゆる仮想通貨や暗号通貨の代名詞となったビットコインだけではない。今や資金力でたいていの国家をしのぐグローバル企業や、中国をはじめとする複数の国家が、伝統的な通貨に取って代わるデジタル通貨の導入を急いでいる。
来るべき新たな金融秩序で覇権を握るのは、果たして誰か。
先行しているのは、もちろん10年以上の実績を誇るビットコインだ。決して万能ではないが、中央集権的な組織に頼らなくても金融システムが構築できる。
斬新な暗号化技術とブロックチェーンと呼ばれるシステムを用いて、ビットコインは政府(中央銀行)の裏書きがなくても国際的な金融取引が可能である──ことを見事に証明した。結果、同様にブロックチェーンの技術を使った仮想通貨が続々と生まれ、グローバル金融の世界に新風を吹き込んでいる。
通貨の発行と管理こそ主権の証しと信じる政府や中央銀行も、今や座視してはいられない。気が付けば中国政府とその中央銀行(中国人民銀行)も、しばらく棚上げにしていたCBDC(中央銀行が発行するデジタル通貨)の発行に向けて動きだし、リブラの先を行こうとしている。