最新記事

日本社会

「生理ちゃんバッジ」に中国人が賛成だった理由

2019年12月9日(月)15時00分
唐辛子(在日中国人コラムニスト)

日本人からは拒否反応が多く出た「生理ちゃんバッジ」だが(「生理ちゃん」と大丸梅田店の特設サイトより)

<大炎上し、着用取りやめとなった大丸梅田店の取り組み。同じ東アジアでも中国人の見方はこうも違う>

「『生理ちゃんバッジ』、かなり話題になっていますね」
「そうですね。でも大騒ぎになったから回収しました」
「着けたことありますか」
「もちろん。生理ちゃんのキャラクター側を表に出したことはないですけど」

先日、大阪のデパート大丸梅田店5階にある「michi kake(ミチカケ)」へ買い物に行った。その時の若い女性店員との会話だ。

「月のみちかけのように、あなたのリズムに寄り添う」というコンセプトのmichi kakeは女性の悩みに応える商品を扱うショップが並ぶ新しいフロア。オープンを記念して、話題の漫画『生理ちゃん』とタイアップしてさまざまなイベントを行った。

女性スタッフの「生理ちゃんバッジ」もその一環で、普段は売り場のPRロゴが描かれた面を表にするが、生理中の場合は個人の選択で『生理ちゃん』の面を表に出す。言葉にしにくい生理痛や生理の大変さを周囲に知らせ、互いに助け合って働きやすい職場づくりを実現するため、10月中旬から始まったが、紹介記事がネットに流れると「セクハラ」「気持ち悪い」と大炎上した。

中国人にとっての「生理」

中国人の目にこの問題は日本の世論とは反対に映る。

私の中国人の友人はみな男女を問わず「生理ちゃんバッジ」企画に賛成した。理由は「強制ではなく、個人の自由選択で決めること」だから。中国社会に生理についてそれほど口に出しにくい空気はない。スーパーでガールフレンドのために生理用ナプキンを買う男性も時々見掛ける。

女子生徒のために「月経カード」を作る学校もある。生理痛のとき、カードに記入するだけで月3日間の休暇が取れる。また国の「女性従業員労働保護条例」の中に、「生理期間は高所作業や低温作業、過度な肉体労働などを禁止」と明記されている。生理痛がひどいときは、病院の証明書があれば有給休暇も取れる。証明書がなくても有給休暇が取れる地方もある。

中国では生理休暇のことを「例假」と言う。「例の休日」という意味だ。ただし今の中国は激しい競争社会なので、「例の休日」を利用する女性は極めて少ない。たくさん休みを取る社員はどの会社にとっても好ましくないからだ。

中国の女性優遇措置は毛沢東が広めた男女平等思想とはあまり関係がなく、伝統的な中医学(漢方医学)思想による。生理中の働き過ぎや、体を冷やすことは深刻な病気につながるという考えだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米、ウクライナへの情報支援を停止とCIA長官 軍事

ビジネス

米2月ADP民間雇用、7.7万人増 7カ月ぶりの低

ワールド

独ウクライナ首脳が電話会談、米指導力の重視で一致

ビジネス

トランプ氏、加メキシコ関税の軽減を検討 5日発表も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行為」「消費増税」に等しいとトランプを批判
  • 3
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 4
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 10
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 5
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 8
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 9
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中