絶望の縮図シエラレオネに希望を探し求めて
Hopelessness and Hope
ただし、援助は貧困を緩和しても、解決はしない。援助は非効率的で、腐敗を助長し、受ける側の自立を破壊すると、数多くのプロジェクトに携わってきたシエラレオネのジョン・ラハイは言う。
援助への依存を断ち切ることは、容易ではない。国際開発に詳しいオックスフォード大学のポール・コリアー教授によると、最貧国ではこの30年、援助が成長率を年間約1%底上げしてきた。単純に打ち切れば、何百万という人が飢えるだろう。
トップダウン型改革の功罪
ガーナの経済学者ジョージ・アイッティは、「農民が繁栄していた黄金時代」への回帰を提案する。アフリカの食糧生産は1961年には自給自足を実現していたが、2007年までに20%の供給不足に陥った。
アイッティや多くの援助活動家は、ボトムアップの開発モデルを支持する。基本的なインフラを提供し、マイクロファイナンス(貧困層向け小規模融資)を活用するのだ。
もっとも、現実的ではなさそうだ。マイクロファイナンスは心温まる逸話を生むが、変化を起こすには小規模過ぎると、コリアーは指摘する。
何より、人々がそれを求めているのだろうか。自給自足農業は、次の収穫まで食いつなげれば大成功という貧困生活でもある。私が現地で話をした若者は、誰一人興味を示さなかった。
もう1つの選択肢は、強力な民間セクターを育てて、近代的な都市社会を建設するシンガポール方式だ。
ルワンダのポール・カガメ大統領は、貧弱な公衆衛生や社会の腐敗など、投資家に嫌われる問題点の解決に力を入れ、インフラや技術研修に投資してきた。ルワンダは金融サービスと情報技術が発展し、世界銀行の「ビジネス環境の現状」ランキングで29位に躍進している。
シエラレオネとルワンダは同じような国土の広さと人口で、人口動態も似ている。どちらも民族の衝突を抱え、内戦から復活しつつある。
ただし、ルワンダ方式は代償を伴う。カガメは一党支配を確立し、98.9%という疑わしい得票率で再選されて、自分が77歳まで続投できるように憲法を改正した。
私がシエラレオネで話を聞いた多くの人は、民主主義を捨てて繁栄するという取引を受け入れるだろう。問題は指導者だ。リー・クアンユーは、そう簡単には見つからない。コリアーが言うように、「独裁が成功の方程式だとしたら、今頃アフリカの国々は裕福になっている」。
昨年4月に就任したシエラレオネのジュリウス・マーダ・ビオ大統領は、欧米からの投資に期待する。ただし、ビジネスには適切な環境が必要だ。ルールのない自由市場は、権力者の私物化へと堕落する。