絶望の縮図シエラレオネに希望を探し求めて
Hopelessness and Hope
首都フリータウンで援助機関の食料の配給を待つ母親の女性 Josephus Olu-Mamma-REUTERS
<内戦とエボラの後遺症に苦しみ、開発から取り残されたシエラレオネで、アメリカ人筆者が見た過酷過ぎる現実>
「なぜ肥だめみたいな国々からこんなに大勢やって来るんだ」。貧しい国の貧しい人々を見下した昨年のドナルド・トランプ米大統領の発言は当然猛反発を買ったが、不快な真実も含んでいる。多くの国で、特に社会経済の底辺の人々の生活はひどい。正式な定義はないが「肥だめ」とは貧しく暴力的で褐色人種がほとんどを占める国のことだろう。グアテマラ、スーダン、イエメン、ミャンマー、ニジェール、ハイチ、バングラデシュ、パキスタン......。だが彼の定義に当てはまる国のほとんどはサハラ砂漠以南のアフリカにある。
世界全体の幸福度が向上するなか、これらの国々は後れを取る一方だ。どんな対策も効果がないように思える。過去50年、先進国は途上国の公的な開発援助に3兆ドル以上を投じ、さらに人道支援や軍事支援、民間からの支援もある。にもかかわらず、いまだに大勢の人々がアメリカ南部の国境に押し寄せている。
トランプのように国境に壁を築いて途上国が自分で何とかしろと言いたくもなるが、それはできない。森林破壊、エイズ、エボラ出血熱、テロ、麻薬、ギャング、不法移民、生態系の破壊といった途上国の問題から先進国を切り離すのは不可能だ。同様に途上国も、気候変動、強制労働、有害廃棄物、性的搾取といった先進国の問題と無縁ではいられない。どんな壁でも2つの世界を隔てることはできない。
ではどうするか。国連の持続可能な開発目標(SDGs)への資金援助を増やすか。税制優遇措置で民間投資を促すか。欧米市場への優先的アクセスか。平和部隊の拡大か。
私はヨーロッパ、南太平洋、アフリカ、アメリカ大陸の数十カ国で働き、世界有数の大企業や世界銀行にも勤務した。何百人もの専門家やエグゼクティブや政府指導者と開発について話したが、援助を増やせば効果があると考える人間は1人もいなかった。
私は解決策を求めてアフリカへ向かった。西海岸の小国シエラレオネ、エボラと紛争ダイヤモンドで有名な国だ。世界の最貧国の1つで、国連の人間開発指数では189カ国中184位とハイチやイランを大きく下回る。何世紀もの間、シエラレオネは絶望の縮図となってきた。だが、経済復興のモデルになり得る国でもある。