最新記事

ヨーロッパ

欧州議会選で「緑の党」が大躍進した理由は環境だけじゃない

Green Parties Rising

2019年6月13日(木)19時10分
ジョシュア・キーティング

欧州議会選の投票後に会見するドイツ緑の党のスベン・ギーゴルド Annegret Hilse-REUTERS

<欧州議会選挙でグリーン派が第4勢力に――極右勢力への対抗軸として支持が広がっている>

気候変動が地球環境にもたらすであろう衝撃に比べれば、先の欧州議会選挙における勢力図の変化などは取るに足りないことかもしれない。しかしそこに、欧州政治の静かだが歴史的な変化を予感させるものを読み取ることもできる。グリーン(緑の党)と総称される環境保護勢力の躍進だ。

メディアの関心は極右政党がどこまで躍進するかに集まっていたから、グリーンの台頭に気付くには時間がかかった。しかし今回の選挙で、各国のグリーン派は既成政党に挑戦状を突き付ける一方、各国の政治をむしばむポピュリストの脅威への対抗軸を示したのではないか。

ドイツでは、緑の党がアンゲラ・メルケル首相の率いる中道右派・キリスト教民主同盟(CDU)に次ぐ議席を獲得。フランスでも左右の既成政党を押しのけて3位を確保。イギリスではテリーザ・メイ首相率いる保守党を破り、ジェレミー・コービン率いる最大野党・労働党を脅かすまでの健闘を見せた。

国境を超えた会派で構成される欧州議会の議席数で見ると、グリーン派は今回の選挙で22議席増の74議席を獲得、ついに4番目に大きな勢力となった。単独過半数の会派はないから、EU首脳人事での発言権は増すし、二酸化炭素(CO2)の排出削減はもちろん、寛容で人道的な移民・難民政策の推進も主張しやすくなるだろう。

グリーン派が躍進したのはなぜか。最もシンプルな答えは地球温暖化に対する懸念の広がりだが、それだけではない。

左右対立の構図は古い

英シンクタンク「欧州改革センター」のソフィア・ベッシュに言わせれば、20世紀後半以降の欧州各国および欧州全体の政治を支配してきた中道右派と中道左派の二大潮流に「ヨーロッパの未来は任せられないという思いが有権者にはあった」。右ポピュリズムの台頭でEUの根幹が揺らぎそうな今だからこそ、EUの統合深化を明確に支持するグリーン派が極右の対抗軸になり得たという事情もありそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

相互関税一部停止でも平均税率引き下げ効果乏しい、イ

ワールド

米NYハドソン川にヘリ墜落、搭乗6人全員死亡 スペ

ビジネス

EUと中国、輸入EVで関税に代わる最低価格の導入協

ビジネス

関税でインフレ加速リスク、政策現状維持が適切=ボス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 3
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が見せた「全力のよろこび」に反響
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 7
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 8
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 9
    【クイズ】ペットとして、日本で1番人気の「犬種」は…
  • 10
    「宮殿は我慢ならない」王室ジョークにも余裕の笑み…
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 7
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 8
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 9
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 10
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中