欧州議会選で「緑の党」が大躍進した理由は環境だけじゃない
Green Parties Rising
EU離脱に揺れるイギリスでグリーン派が議席を伸ばしたのは、有権者に既成政党、とりわけ中道左派への幻滅があるからだ。イングランドとウェールズの緑の党を率いるジョナサン・バートリーは言う。「1%の超富裕層からの富の再分配を求める私たちを左派と決め付ける人もいるが、実際は労働党だけでなく、保守党からも私たちに票が流れている。もはや昔のような左派と右派の対立という構図は崩壊している」
その崩壊の恩恵を受けたのはグリーン派だけではない。いわゆる自由主義派(欧州では企業寄りで市場の自由を尊重する中道右派を指す)も議席を増やしたし、環境保護政策に反対する極右勢力も台頭した。
それでも、若い世代の間でグリーン派への支持が広がっているのは朗報と言えるだろう。ドイツ緑の党のスベン・ギーゴルドによれば、2年前の国政選挙で極右の「ドイツのための選択肢(AfD)」になびいた若者たちも、今回は温暖化対策に後ろ向きなAfDに背を向けたという。ただし「この傾向がずっと続く保証はない」とギーゴルドは言う。今後は極右や既存の主要政党も、環境政策重視に舵を切ると考えられるからだ。
そうなると、既成政党との連立協議などでグリーン派の環境政策が薄められる恐れもある。それに耐える余力が、今の地球にあればいいが。
<本誌2019年6月18日号掲載>
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