最新記事

防災・復興

震災と復興の教訓──日本のレジリエンス(強靭性)を世界へ

PR

2019年3月26日(火)10時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

フォーラムでは日本社会のレジリエンスをテーマに様々な意見が交わされた Photography by Thaddeus Pope | IAFOR Media

<度重なる自然災害を乗り越えてきた、先進国として特異な経験を持つ日本社会には、その教訓を世界へ積極的に発信する責務がある>

1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災をはじめ、平成の時代に日本は地震や台風など大規模な自然災害に幾度も見舞われた。その経験から蓄積された防災への備えや被災地での救援活動、被災者支援、そして被災地域の経済復興といった、日本社会の災害に対する「レジリエンス(強靭性)」の教訓を、もっと積極的に世界へ向けて発信するべきではないか――。震災から24年を迎えた神戸で、内外から集まった災害関連の研究者が熱い議論を交わした。

先月22日、神戸市の兵庫県立美術館で、日本と世界の学術研究者や報道機関、日本在住の外国人など約100人が参加して「関西レジリエンスフォーラム2019」が開催された。主催したのは日本政府で、今年9月から神戸をはじめ全国の会場で開催される「ラグビーワールドカップ2019日本大会」や、来年2020年の「東京オリンピック・パラリンピック競技大会」を前に、世界に向けて開かれた日本とレジリエンスをアピールするのが狙いだ。

午前中は、「災害リスク軽減」をテーマにした各国研究者によるパネルセッションが行われ、モデレーターを務めるシンガポール国立大学の政治学者ペン・アー・ラム氏が「高齢化と人口減少という大きな2つの課題を抱えた日本社会が、これらの問題にどう対処し、レジリエンスを発揮できるか世界が注目している」と語った。

「沈黙は美徳」とされてきた日本の伝統

続いて、国連国際防災戦略事務局(UNISDR)の駐日事務所代表を務める松岡由季氏が、東日本大震災の経験もふまえて策定され、国連加盟国によって採択された、防災と復興に関する国際的指針「仙台防災枠組 2015-2030」について説明した。

東日本大震災では、それまでいわゆる「災害弱者」とされてきた女性や高齢者、障害者が、緊急避難対応や復興の局面で果たす役割の重要性が明らかになった。松岡氏は、こうした教訓に基づいて「仙台防災枠組」では、コミュニティのすべての当事者が防災、復興、避難計画の作成などに参画することを促進している、と語った。

また大阪大学大学院国際公共政策研究科の佐藤治子特任教授は、「日本では長らく沈黙を美徳とする伝統があり、災害の経験・知識に関しても積極的には発信してこなかったが、これからは日本が培ったレジリエンスを世界で共有することが重要だ」と呼び掛けた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

鉱工業生産2月は4カ月ぶり上昇、基調は弱く「一進一

ビジネス

午前の日経平均は大幅続落、米株安など警戒 一時15

ワールド

ハマスへの攻撃続けながら交渉している=イスラエル首

ワールド

米関税、日米貿易協定の精神に鑑み疑問なしとしない=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中