震災と復興の教訓──日本のレジリエンス(強靭性)を世界へ
PR
フォーラムでは日本社会のレジリエンスをテーマに様々な意見が交わされた Photography by Thaddeus Pope | IAFOR Media
<度重なる自然災害を乗り越えてきた、先進国として特異な経験を持つ日本社会には、その教訓を世界へ積極的に発信する責務がある>
1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災をはじめ、平成の時代に日本は地震や台風など大規模な自然災害に幾度も見舞われた。その経験から蓄積された防災への備えや被災地での救援活動、被災者支援、そして被災地域の経済復興といった、日本社会の災害に対する「レジリエンス(強靭性)」の教訓を、もっと積極的に世界へ向けて発信するべきではないか――。震災から24年を迎えた神戸で、内外から集まった災害関連の研究者が熱い議論を交わした。
先月22日、神戸市の兵庫県立美術館で、日本と世界の学術研究者や報道機関、日本在住の外国人など約100人が参加して「関西レジリエンスフォーラム2019」が開催された。主催したのは日本政府で、今年9月から神戸をはじめ全国の会場で開催される「ラグビーワールドカップ2019日本大会」や、来年2020年の「東京オリンピック・パラリンピック競技大会」を前に、世界に向けて開かれた日本とレジリエンスをアピールするのが狙いだ。
午前中は、「災害リスク軽減」をテーマにした各国研究者によるパネルセッションが行われ、モデレーターを務めるシンガポール国立大学の政治学者ペン・アー・ラム氏が「高齢化と人口減少という大きな2つの課題を抱えた日本社会が、これらの問題にどう対処し、レジリエンスを発揮できるか世界が注目している」と語った。
「沈黙は美徳」とされてきた日本の伝統
続いて、国連国際防災戦略事務局(UNISDR)の駐日事務所代表を務める松岡由季氏が、東日本大震災の経験もふまえて策定され、国連加盟国によって採択された、防災と復興に関する国際的指針「仙台防災枠組 2015-2030」について説明した。
東日本大震災では、それまでいわゆる「災害弱者」とされてきた女性や高齢者、障害者が、緊急避難対応や復興の局面で果たす役割の重要性が明らかになった。松岡氏は、こうした教訓に基づいて「仙台防災枠組」では、コミュニティのすべての当事者が防災、復興、避難計画の作成などに参画することを促進している、と語った。
また大阪大学大学院国際公共政策研究科の佐藤治子特任教授は、「日本では長らく沈黙を美徳とする伝統があり、災害の経験・知識に関しても積極的には発信してこなかったが、これからは日本が培ったレジリエンスを世界で共有することが重要だ」と呼び掛けた。