愛と死のおとぎ話『ア・ゴースト・ストーリー』
A Philosophical Fairy Tale
このコンパクトで野心的な作品を見た後、観客は宇宙的なスケールの問いを抱いて家路に就くことになる。ある場所、ある人間に執着するとはどういうことか。悠久の時の流れの中で、ほんの一瞬この地上に身を置く私たちがどうして生の意味なぞ求めるのか。生者が死者のために果たすべき務めとは......。
この映画の批評には、幽霊に引っ掛けて、いつまでも心に「付きまとう」というフレーズが多く使われるだろう。手あかの付いた表現だが、この場合はまさにぴったりの言葉だ。見終わって何日たっても映画が投げ掛けた問いをあれこれ考えてしまう。揚げ句に私は築100年をゆうに超える自分のアパートの代々の住人たちのことまで考え始めた。このアパートを愛した誰かがシーツの穴から私たちを見守っているだろうか。
この映画を見たら、幽霊の出る家にそれと知らずに住むこともそれほど怖くなくなる。霊の存在を信じていなくても、死者のまなざしを感じてみれば、今この瞬間生かされていることに深い驚嘆の念を覚えるだろう。
<本誌2018年11月27日号掲載>
※11月27日号(11月20日発売)は「東京五輪を襲う中国ダークウェブ」特集。無防備な日本を狙う中国のサイバー攻撃が、ネットの奥深くで既に始まっている。彼らの「五輪ハッキング計画」の狙いから、中国政府のサイバー戦術の変化、ロシアのサイバー犯罪ビジネスまで、日本に忍び寄る危機をレポート。
© 2018, Slate
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