最新記事

ゲノム編集

遺伝子編集した双子の女児が誕生と主張の中国科学者に批判集まる

2018年11月29日(木)18時30分
松岡由希子

成果と意義を改めて強調した賀建奎博士 The National Academies

<中国の研究者が「ゲノム編集」技術で受精卵を改編して双子を誕生させた公表したが、その後中国国内外から非難の声が高まっている>

中国の南方科技大学に所属する賀建奎博士は、2018年11月25日、動画共有サービス「ユーチューブ」を通じ、「HIV(エイズウイルス)に感染した男性とこれに感染していない女性との受精卵の遺伝子をCRISPR-Cas9というゲノム編集技術で改変し、HIVに耐性を持つ双子の女児を誕生させた」と公表した。

賀博士は成果と意義を改めて強調

11月28日には、香港大学で開催されていたゲノム編集に関する国際会議に登壇し、およそ700名の聴衆に向けて、この研究の成果と意義を改めて強調している。


中国の研究者グループも規制の強化を求める声明発表

現時点において、この研究結果は、論文として査読付きの学術雑誌で発表されておらず、第三者による検証が行われていない。賀博士が籍を置く南方科技大学は、11月26日、「賀博士の研究は大学外で行われ、大学や学部への報告もなかった。大学も学部もこの研究について認識していない。これが事実であるならば、研究倫理や行動規範に反するものだ」との声明を発表した。

中国の国家衛生健康委員会(NHC)では、同日、広東省の衛生健康委員会に対し、この事実関係について速やかに調査するよう命じている。

賀博士がこの研究結果を公表して以降、ゲノム編集技術による人の受精卵の遺伝子改変について中国内外から様々な懸念や批判が寄せられている。中国でエイズ研究にたずさわる140名の研究者グループは、11月27日、賀博士の研究を強く非難し、このような研究や実験を厳しく禁じるよう、規制の強化を当局に求める共同声明を発表した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米プリンストン大への政府助成金停止、反ユダヤ主義調

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中