最新記事

インドネシア

スラウェシ島の地震・津波の死者1558人、被災した子供60万人の多くがホームレスに

Death Toll in Indonesia Grows as Looters Are Arrested

2018年10月5日(金)17時00分
ジャクブ・レワンドウスキ

津波で陸に乗り上げた船と被災した子供たち(スラウェシ島ドンガラ、10月3日)Athit Perawongmetha-REUTERS

<この上なく厳しい環境でホームレスになった子供たちの助けはまだか>

インドネシア中部スラウェシ島を襲ったマグネチュード(M)7.5の地震と津波から10月5日で1週間。国家災害対策庁は、死者が1558人に上ったと明らかにした。また略奪容疑で逮捕された住民は92人に上った。

国家災害対策庁のストポ・プルウォ・ヌグロホ報道官は10月4日、死者がさらに増えて1424人、行方不明者は114人に上ったと発表した。

負傷者は数千人に達し、その多くは倒壊や津波で家を失った。

「子供にとってこれ以上に恐ろしい経験はない。多くの子供がショックを受けて傷つき、孤独と恐怖の真っ只中にいる。生き残った親戚を探す子供たちは、子供が見るべきではない恐ろしいものまで見てしまう」と、国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」でのズベディー・コテンはアルジャジーラに語った。被災した60万人の子供たちの多くはホームレスになり、路上で生活している、と彼は付け加えた。

追い打ちをかけるように、スラウェシ島では10月3日朝、ソプタン山が噴火した。噴煙は高さ4000メートルまで達したが、今のところ被害は報告されていない。

生きるための略奪から金目当てへ

インドネシア当局は、被害がもっとも激しかった州都パルとその周辺で略奪を行った92人を逮捕。兵士たちは、略奪を続ける住民に向けて、発砲するよう命じられた。

「今後はもし略奪行為を見つけたら、一発は威嚇射撃を行うが、次は撃って逃げられなくする」と、インドネシア軍のイダ・デワ・アグング・ハディサプトラ大佐はAFP通信に語った。地震と津波の発生直後はひどい品不足で、生きるために略奪する群衆を警官たちは傍観するしかなかった。

「被災後2日間は、みんな食料や生活用品が必要だったから(略奪も)大目に見るしかなかった。だが3日目には、電化製品のようなものの略奪が始まった」と、彼は言った。

水や食料、避難所、燃料など何もかも不足している被災地へ向けて、アメリカや日本を含む17カ国とEU、国連などが10月1日までにインドネシア政府に対し、援助を申し出た。

「インドネシア政府は災害対応の経験が豊富で、十分な備えもある。だがどんな国でも、国外からの援助は必要だ」と、国連のマーク・ローコック事務次長(人道問題担当)兼緊急援助調整官は声明で述べ、1500万ドルの資金援助を発表した。米CNBCが伝えた。

すでにシンガポール、韓国、イギリス、マレーシア、インドの5カ国が、輸送機11機の派遣を約束。日本も支援物資の輸送にあたるため、輸送機1機、自衛隊員ら約40人の派遣を決定するなど、国際社会の支援が本格化している。

(翻訳:河原里香)


【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!

気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを

ウイークデーの朝にお届けします。

ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

来週の米地銀決算、関税巡る不確実性による影響に注目

ワールド

日中韓、財務・中銀当局者会合で米関税の影響を協議=

ワールド

NYハドソン川に遊覧ヘリ墜落、子ども3人含む6人全

ビジネス

新興国市場、3月の純流出額171億ドル 1年7カ月
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 3
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が見せた「全力のよろこび」に反響
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 7
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 8
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 9
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 10
    右にも左にもロシア機...米ステルス戦闘機コックピッ…
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 7
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 8
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 9
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 10
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中