W杯ロシア代表、予想外の躍進もプーチンは興味なし?
プーチンにとって戦争は「おいしい」戦略
プーチンのお気に入りのスポーツといえば、国際大会で華々しい成績を収めてきたアイスホッケー。そして柔道をはじめとする格闘技だ。ただ、それ以上にプーチンがひきつけられ、さらに国民の愛国心を燃え上がらせるものがある。戦争だ。
ウクライナやシリアへの軍事介入でプーチンは、自国が払った犠牲に比べて大きな戦果を挙げた。あるイギリス政府高官は「シリアへの介入は大勝利だったと主張し、ロシアは中東地域でも無視できない存在として復活したと主張できる」と、外交的な意味合いを説明する。また戦争とその勝利は、プーチンの支持率アップと政権の基盤強化につながる。
5月に大統領としての4期目をスタートさせたプーチンが、この「おいしい」戦略をもう繰り返さないと考える理由は乏しい。メリットがデメリットを上回ると考えれば、躊躇なく軍事力を行使する危険性がプーチンにはある。
その判断を下すうえで、国際的な規範は通用しない。自身の利益になると判断すれば、世界の協調やルールなど平気で無視してきた。ウクライナやイギリス、さらには自国民に対して空爆や化学兵器使用を行うバシャル・アサド政権を支援するシリアで、そのことは証明されている。
そう考えるとサッカーはもちろん、激しいぶつかり合いが醍醐味のひとつであるアイスホッケーも、さらには格闘技ですら、ルールに縛られている以上はプーチンにとって退屈な代物なのかもしれない。
日本ではなぜかその危険性が軽視され、脅威論といえば中国ばかりが目立つが、現在の国際舞台におけるロシアは、ピッチ上の代表チームよりはるかに危険な存在だ。
本誌7/3号の「中国よりも おそロシア」特集では、本誌コラムニストで元CIA工作員のグレン・カールが、日本人が気付かないうちに日本が既に巻き込まれているロシアのアジア戦略と、そこで行われている冷戦さながらの情報戦について解説する。
さらに、4期目を迎えたプーチンが最後に成し遂げようとしている野望、繰り返されてきた政敵や元スパイの暗殺事件に関する新説、世界の独裁者たちがたどった末路などを紹介。
今はW杯を成功させることに集中しているであろうプーチンだが、その頭の中では今後の世界情勢についてどんな戦略が練られているのか。
ちなみにロシアがウクライナのクリミア自治共和国を自国に編入したのはソチ冬季オリンピックの翌月、シリア内戦に介入して空爆を開始したのは、その翌年のことだった。
<本誌7/3号(6/26発売)特集「中国よりも おそロシア」では、中国より危険な北方の隣国ロシアの恐ろしさを検証。他国への軍事介入や諜報活動、サイバー攻撃、暗殺......ロシアが狙う新たなターゲットは何か。華やかなW杯の陰でプーチンがめぐらす謀略とは>