火災で暴かれたロシア官僚の病的な習性
トゥレエフは15年の知事選で得票率97%で再選されていたが、事件への悲しみと怒りを示すためデモに参加した有権者のことを「トラブルメーカー」扱いした。一般市民とは違う「反体制派」だと言ったのだ。
また、同州のセルゲイ・チビリョフ副知事は自分の目の前に立ちはだかった男性に向かって「若者よ、君はこの悲劇を自己PRのために利用しようというのか?」と言った。
男性は「私の家族は皆死んだ」と答えた。彼は、妻と3人の幼い子供、そして妹を火災で失った遺族だった。
その後チビリョフ副知事は中央広場で自分を取り囲んだ人々に対し、ひざまづいて当局が家族の死を防げなかったことへの許しを請うた。
これは副知事の中の人間らしさが、官僚として身にまとった鎧を突き破って外に出てきたということだろう。彼の当初の反応はまさに、お上の許可のない草の根活動に対するロシアの官僚の「あるべき反応」だった。
今回に限らず、非常事態に見舞われたロシアの官僚の行動からは、彼らが守るべき「教義」とは何かがうかがえる。
・脅威はロシアという国のコントロール範囲外(外国の工作員や過激派など)からしか生まれない。
・外国の勢力はテロ行為や自然災害、人災を利用してロシアという国の弱体化を図ろうとすることがある。この脅威に対応することは、例えば犠牲者や被災者に緊急援助を提供することと同じくらい重要で、優先順位第1位と言ってもいい。
・説明責任は上に対してのみ存在する。公務員は一般市民ではなく上司に対してのみ説明責任を負う。というのも、市民向けの説明責任と上司向けの説明責任は相容れないからだ。
・お上の許可を得ていない運動や、ソーシャルメディアを介した誰の指示にもよらない情報の流布は何であれ脅威である。出所が国家にとって未知の情報源であれば、それは敵対的で外国がカネを出している可能性が高い。
トップに立っているのが誰であれ(プーチン自身も含めて)、官僚たちは心からこの「教義」を信奉しており、日々その教えに従って行動している。