最新記事

トランプ暴露本 政権崩壊の序章

暴露本『炎と怒り』が明かすトランプ政権の深層

2018年2月13日(火)18時00分
アレクサンダー・ナザリアン(本誌シニアライター)

バノン(写真左)とクシュナー(同右)の確執やスパイサーの本音も暴露 Kevin Lamarque-REUTERS

<トランプと保守派メディアの太いパイプや広報対応のずさんさが明らかに>

ドナルド・トランプの大統領就任の裏で大きな役割を果たしたのが、テレビ局のFOXニュースやオンラインメディア「ブライトバート」といった右派メディアだ。彼らはトランプを大統領にふさわしい人物と持ち上げ、共和党の既存の政治家に取って代われる存在だというイメージをつくり上げた。

マイケル・ウルフの新著『炎と怒り』にも、トランプと保守派メディアの蜜月ぶりや政権の広報部門の裏側が赤裸々に描かれている。暴露された10の「事実」を紹介すると......。

【1】ロジャー・エールズはFOXニュースのCEOとして米政界に多大な影響力を持ち、大統領選でトランプの助言役も務めた人物。16年にセクハラ疑惑で同社を去ったが、トランプの右腕だったスティーブ・バノン大統領首席戦略官・上級顧問(当時)に接近。新たな保守系テレビ局を立ち上げてFOXの有名キャスターらを引き抜く構想について相談していたという。

「(FOXの看板キャスター)ビル・オライリーと(トーク番組の人気司会者)ショーン・ハニティが加われば、近い将来、トランプに刺激された右派の情熱と主導権による新時代が訪れ、大きなテレビ利権が生まれる可能性があった」と、ウルフは書いている。

【2】そのエールズは「トランプが自分の悪口ばかり言っている」という報道に傷つき、トランプと仲たがいしていたと、ウルフは指摘する。エールズは「最高の忠誠心を求める男ほど他人への忠誠心が薄いものだ」と不満を漏らしていたという。エールズは昨年5月、77歳で亡くなった。

【3】トランプは何かにつけてニューヨーク・タイムズ(NYT)やCNNといった大手メディアを批判するが、その一方で主要メディアが自分についてどう報じるか常に気にしていたという。「大統領の会話のかなりの部分は、キャスターや司会者が彼について言ったことの繰り返しだ」と、ウルフは書く。毎日何時間もテレビを見ているという報道について、トランプは否定しているが。

【4】ウルフに言わせればトランプは典型的な女性差別主義者だが、職場では女性を信頼している。女性のほうが男性よりも忠誠心が強く、信頼が置けるからだという。ただし女性はセクハラを我慢しない限り、トランプと一緒に働くことはできなそうだが。

【5】テレビカメラの前で激しい言葉でトランプを擁護する姿が印象的なケリーアン・コンウェイ上級顧問。だがプライベートでは、大統領をこき下ろす発言を連発しているようだ。「彼女はトランプをひどい誇張ばかりのばかげた人物と見なしているようだ。彼女は大統領に対する自身の考えをさまざまな表情を駆使して伝えている。軽蔑のまなざしを向けたり、口をポカンと開けたり、頭を振ったり」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ和平案、ロシアは現実的なものなら検討=外

ワールド

ポーランドの新米基地、核の危険性高める=ロシア外務

ビジネス

英公的部門純借り入れ、10月は174億ポンド 予想

ワールド

印財閥アダニ、会長ら起訴で新たな危機 モディ政権に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 10
    70代は「老いと闘う時期」、80代は「老いを受け入れ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中