暴露本『炎と怒り』が明かすトランプ政権の深層
【6】28歳の若さで広報部長に抜擢された元モデルのホープ・ヒックスは、トランプ陣営の選対本部長で後に解任されたコーリー・ルワンドウスキと恋愛関係にあったと噂されている。トランプはヒックスに向かって、「ルワンドウスキが付き合った女の中で君が一番セクシーだな」と言い放った。ヒックスは「トランプの下で働いた誰よりも献身的で、(トランプのセクハラに)寛容だ」と、ウルフは指摘している。
【7】メディア対応の最前線に立つ大統領報道官のポストには、FOXニュースの人気司会者タッカー・カールソンや、保守派の論客ローラ・イングラムなどの名前も挙がっていたという。結局、白羽の矢が立てられたのは長年共和党の中枢で働いてきたショーン・スパイサー。オファーを受けたスパイサーは、「引き受けたら、再び仕事をすることができるだろうか」と自問したという。
【8】トランプはNYTのベテラン記者で、ゴシップに強いマギー・ハバーマンをやたらと気にしているという。彼女の記事はホワイトハウスの内情を詳細かつ批判的に伝えるもの。「トランプはクイーンズ出身で、NYTに畏怖の念を抱いている。その点を除けば、トランプをあざ笑い、イメージを悪化させるハバーマンにトランプとヒックスがなぜ期待するのか、ホワイトハウスの誰も理解できない」
【9】トランプの娘婿で上級顧問のジャレッド・クシュナーと、バノンの仲がしっくりいっていなかったのは周知の事実。2人はそれぞれ独自のメディア戦略を持っており、親しいメディアにリークした情報の内容が食い違うこともしばしばあった。
バノンの広報部長を務めていたアレサンドラ・プリエイトは「ウイットに富み、シャンパンに目がない保守派のセレブ」。彼女が親しくしている保守派の大富豪レベッカ・マーサーは、ブライトバートを含むバノンの政治活動を支援してきたとされる。ただしマーサーは『炎と怒り』の出版に先立ち、バノンと距離を置く声明を出した。
【10】トランプ政権の「広報活動はホワイトハウスの現代史の中でもまれに見る機能不全状態に陥っている」と、ウルフは書く。広報業務を取り仕切るのは広報部長のヒックスと、昨年7月に辞任したスパイサーに代わって報道官に就任したサラ・サンダースだ。サンダースはウルフの新著を「今まで誰も名前を聞いたことがない著者によるごみ」と切り捨てた。
<本誌2018年1月23日号「特集:トランプ暴露本 政権崩壊の序章」から転載>
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