「チャイナ・イニシアチブ」に巻き込まれている日本
二階氏は昨年5月、「一帯一路国際協力サミットフォーラム」に日本の代表団団長として、安倍総理の親書を携えて出席した。そして「日本は一帯一路に協力すべきだ」と述べている。
昨年8月には自民、公明両党と中国共産党との間で第6回「日中与党交流協議会」が仙台市で開催され、「一帯一路への協力を具体的かつ積極的に検討する」という共同提言までまとめあげた。会合には、日本側からは自民党の二階氏、公明党の井上義久氏(幹事長)が、中国側からは中共中央対外連絡部の宋濤部長らが出席している。
二階氏は、昨年12月末、第7回日中与党交流協議会に参加するために訪中し、中共中央党校で講演した。その際、戦略的互恵関係を基に未来を創り上げる「共創」に格上げすることを提唱した。また、「大国である中国と、それを追う日本が協力し、時に競争することも必要」としながら、「いかなる時でも日中の交流を途絶えさせてはいけない」と述べている。
その後、習近平国家主席とも会い、代表団とともに記念撮影に臨んだ後、習近平の母校である清華大学から名誉教授の称号を与えられて、完全に中国の術中に収まった。
尖閣諸島に関しては棚上げ論者である二階氏は、中共中央にとって、これほどターゲットにするのに価値のある存在はない。
中国の戦略的狙いを見逃すな
このように二階氏にターゲットを絞るのは、二階氏が自民党内で力を持っていることを中国が知っているからであり、案の定、安倍首相も、一帯一路に協力する方向に日本を導き始めている。中国は日米を落して、一帯一路を通してグローバル経済の覇者になり、アメリカを追い抜こうとしている。トランプ政権の誕生は、中国にとっては千載一遇の、又とないチャンスでもある。
日本の経済界が一帯一路のバスに乗り遅れまいと焦っていることも中国は見逃していない。
しかし、1月14日付のコラム「尖閣に中国潜水艦――習近平の狙いと日本の姿勢」にも書いたように、中国は領土や安全保障問題に関しては、日本に一歩たりとも譲る気はない。尖閣に対する挑発的行為は、「当然のことのように」今後も続くだろう。日本はそのことを肝に銘じるべきだ。
日本が中国をコントロールしているのでなく、日本が中国にコントロールされている図が描かれつつある。
(なお、海警は武警の中央軍事委員会直属という改変に伴い、同じく中央軍事委員会の管轄下に編有され「軍隊」となる。海警は国務院系列の組織であることから、正式には3月5日から開催される国務院側の立法機関である全国人民代表大会で決議される。日本はそのことも認識すべきだろう)
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。