ディズニーが認めたテクノロジーアーティスト深澤研 MR技術で世界に魔法をかける
その点、深澤が作る世界には底知れない驚きがある。通路の隅にうごめく6万匹のイナゴは、体験者の動きに応じて飛び方も変わるようプログラミングされている。あまりにリアルで、飛んでくるイナゴを思わず手で振り払ってしまうほどだ。
舞台となる館の歴史や背景も細かく設定。住人を襲った悲劇、重なる不幸、そこから始まる黒い噂を小説のように作り込み、登場する無数の「亡者」にはそれぞれ生前の姿まで設定した。そこまでする理由を深澤に尋ねると、「やりたいことをやっただけ」と、サラリと言う。しかし、そこに他と一線を画す本質がある。未知の技術をどう生かすかという「技術先行型」ではなく、表現したい世界がまずあって、それを実現するために技術を使う。だから、技術ありきの場合に陥りやすい空虚さとは無縁でいられる。
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深澤が作り込む世界は怖いだけでなく、ため息をつくほど美しい。そんな美しいホラーの世界に魅了されたのは4歳の頃。家族と出掛けた東京ディズニーランドで、ホーンテッドマンションを訪れたのがきっかけだ。
東京・大田区で3人兄姉の末っ子として育ったが、人見知りが激しく小学生の頃に通った学習塾では友達はゼロ。でも絵を描くことと、耽美な外国のホラーやファンタジーの世界が大好きで、特にミヒャエル・エンデの『モモ』と『はてしない物語』の世界に夢中になった。レオナルド・ダビンチの解剖のデッサン画を夢中で模写し、誕生日にもらった人間の頭蓋骨の石膏像を持ち歩いた。