ディズニーが認めたテクノロジーアーティスト深澤研 MR技術で世界に魔法をかける
怖いだけではない世界観
大学卒業後は、システムエンジニアなどIT関連の仕事をしながら、絵画やCGを使った映像も制作するように。2006年には、文豪バルザックの『ざくろ屋敷』を原作にした映像作品の作画を手掛け、美しくも不穏な予感を秘める独特な世界観が高く評価された。パリのバルザック博物館からオファーを受け、個展が開かれたほどだ。
昔も今も共通するのは、ただ怖いのではなく、記憶に残る世界を作りたいという思い。地獄を旅したり魔物の体内を探検したり、現実の代替ではなく現実以上の魔法のような体験をしてほしいと深澤は言う。「大好きな一人旅で、ふとした瞬間や情景に出くわしたときの感動や驚きを、最大限に増幅させて表現したい」
TYFFONIUMでは2017年12月22日から、床に振動を加えて一層リアリティーを高める試みをスタートさせた。さらに2018年春には黄泉の世界の船旅をテーマとした作品を始動し、同時に体験できる人数も現在の2人から4~5人に増やす見通しだ。
MRなど新しいバーチャル体験を生み出す技術は、今後も注目の領域だ。現在マイクロソフトが主導しているが、アップルもAR(拡張現実)グラスを2019年には発表すると噂されている。
そんななか、深澤も新しいアイデアを温めている。例えば世界中にTYFFONIUMを作り、遠隔地を繋げてリアルタイムに国境を超えた交流ができたら──そんな夢のような世界さえも、深澤なら「正夢」にしてくれる気がする。