最新記事

アメリカ社会

アメリカ献体市場レポート 売られた部位が語るドナーの悲劇

2017年11月10日(金)12時30分

ロイターは購入した頭部の身元を特定できなかった。だがコディさんの場合は、24歳と若すぎる死であったため、南部各州における死亡記事の検索から身元を突き止めることができた。

ソーンダース夫妻の許可と協力を得て、ロイターはDNA鑑定を法医学研究所に依頼。ロイターが手に入れた頸椎はコディさんのものと確認された。

8月後半、記者はソーンダース夫妻を再び訪れ、リストア・ライフがコディさんの遺体を切断し、脊椎の一部を売っていたというロイターが得た情報を伝えた。

夫妻はしばらく沈黙した。

アンジーさんは遠くを見つめていた。リチャードさんはうつむいていた。

それからアンジーさんが口を開いた。

「皮膚のサンプルを取るだけだと思っていた」と語り、涙を流した。

リチャードさんは「終わったことだよ」と言って、アンジーさんを慰めようとしていた。

「もう手術はまっぴらなのに」とアンジーさんは語った。

2人は30秒ほど沈黙したのち、リチャードさんはアンジーさんの方を向いて「もう終わった」ことだと言った。

コディさんの遺体が切断されると知っていたら、献体しなかったと2人は言う。コディさんは短い人生のあいだで、すでにあまりに多くの手術に耐えてきたと感じていたからだ。亡くなったコディさんが、誰かに「切られる」ことは望んでいなかったし、思いもよらなかった、とリチャードさんは語る。

その一方で、「他に手立てがなかった。自分たちにとって(献体が)最もベストな選択肢のように感じた」という。

リチャードさんは、リストア・ライフがコディさんの体の他の部分も使っていたかどうか記者に尋ねた。記者は分からないと答えた。ブローカーは普通、そうした情報は公開しない。リストア・ライフに回答を求めることはしないだろうと、リチャードさんは言う。

「彼らを責めたりはしない」とリチャードさんは語り、コディさんの遺体に何が起きたか教えてくれたことに対し、記者に感謝の意を述べた。「知る由もなかったことだから」

アンジーさんも「手掛かりすらなかったでしょう」と語った。

今月、ソーンダース夫妻の希望に従い、ロイターが費用を負担してコディさんの頸椎をミネソタ州で火葬した。記者はテネシー州の自宅にコディさんの遺灰を届けた。

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

Brian Grow and John Shiffman

[タウンセンド(米テネシー州) 25日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

イオンの25年2月期、営業減益に下方修正 物価高が

ワールド

韓国大統領罷免、6月3日選挙か 尹氏「申し訳ない」

ワールド

石破首相、トランプ氏との電話会談調整 米関税巡り野

ビジネス

米関税、世界経済を急減速させる恐れ=ADBチーフエ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描かれていた?
  • 2
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 5
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 6
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 7
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 8
    テスラが陥った深刻な販売不振...積極プロモも空振り…
  • 9
    アメリカから言論の自由が消える...トランプ「思想狩…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中