アメリカ献体市場レポート 売られた部位が語るドナーの悲劇
ロイターは購入した頭部の身元を特定できなかった。だがコディさんの場合は、24歳と若すぎる死であったため、南部各州における死亡記事の検索から身元を突き止めることができた。
ソーンダース夫妻の許可と協力を得て、ロイターはDNA鑑定を法医学研究所に依頼。ロイターが手に入れた頸椎はコディさんのものと確認された。
8月後半、記者はソーンダース夫妻を再び訪れ、リストア・ライフがコディさんの遺体を切断し、脊椎の一部を売っていたというロイターが得た情報を伝えた。
夫妻はしばらく沈黙した。
アンジーさんは遠くを見つめていた。リチャードさんはうつむいていた。
それからアンジーさんが口を開いた。
「皮膚のサンプルを取るだけだと思っていた」と語り、涙を流した。
リチャードさんは「終わったことだよ」と言って、アンジーさんを慰めようとしていた。
「もう手術はまっぴらなのに」とアンジーさんは語った。
2人は30秒ほど沈黙したのち、リチャードさんはアンジーさんの方を向いて「もう終わった」ことだと言った。
コディさんの遺体が切断されると知っていたら、献体しなかったと2人は言う。コディさんは短い人生のあいだで、すでにあまりに多くの手術に耐えてきたと感じていたからだ。亡くなったコディさんが、誰かに「切られる」ことは望んでいなかったし、思いもよらなかった、とリチャードさんは語る。
その一方で、「他に手立てがなかった。自分たちにとって(献体が)最もベストな選択肢のように感じた」という。
リチャードさんは、リストア・ライフがコディさんの体の他の部分も使っていたかどうか記者に尋ねた。記者は分からないと答えた。ブローカーは普通、そうした情報は公開しない。リストア・ライフに回答を求めることはしないだろうと、リチャードさんは言う。
「彼らを責めたりはしない」とリチャードさんは語り、コディさんの遺体に何が起きたか教えてくれたことに対し、記者に感謝の意を述べた。「知る由もなかったことだから」
アンジーさんも「手掛かりすらなかったでしょう」と語った。
今月、ソーンダース夫妻の希望に従い、ロイターが費用を負担してコディさんの頸椎をミネソタ州で火葬した。記者はテネシー州の自宅にコディさんの遺灰を届けた。
(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
[タウンセンド(米テネシー州) 25日 ロイター]
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