中国の市場自由化は二の次? 支配強める習近平の最優先事項
安定優先
中国にとって必要だが痛みを伴うと多くのエコノミストが主張するその他の改革も、習氏の下では遅々として進んでいない。それは公的部門の債務圧縮に向けた抜本的な対応や、地方政府の債務問題に取り組むための財政整備、住宅バブルを抑制する不動産新税導入、農家の土地売却の自由度拡大などだ。
中国企業の海外買収に制約を加えることを含めた資本規制は、人民元の安定に寄与した半面、人民元国際化の野望にはマイナスとなっている。
改革推進派からは、中国政府は経済や社会の安定が損なわれるのを恐れ、また国有企業など強力な既得権益者の抵抗に直面して、経済構造をがらりと一変させるような改革を避けてきたとの声が聞かれる。しかし中国ニューサプライサイド経済学研究所ディレクターのジア・カン氏は「そうした改革をしないと、さまざまな摩擦の蓄積が続いて、リスクがさらに高まり、経済社会が進展していく希望が砕かれかねない」と警鐘を鳴らす。
習氏は、しっかりした経済成長が続いていると胸を張れるかもしれない。今年の経済成長率目標の6.5%前後とされているものの、実際は7%近くになりそうだからだ。それでも成長は、より持続可能な消費ではなく、借り入れと投資に依存する構図は変わっていない。
さらに国家の経済に対する支配を拡大することが、習氏の2期目の主な政策課題になっている。このため政府がいくつかの規制セクターを外国に開放すると宣言しているにもかかわらず、一部の外資系企業団体は眉唾だろうと疑いの態度を隠さない。米中ビジネス協議会幹部のジェイコブ・パーカー氏は「外銀の出資規制が49%から50%かそれ以上になるまで、あるいは外資系保険が完全に市場にアクセスできるまでは、5年前と同じ会話しかできない」と述べた。
国有企業統合
習氏はまた、国有企業が経済の勘所を押さえるべきだと再び主張するようになった。
中国市場に詳しい外国の専門家は、政府が国有企業を統合して一層巨大な規模にする取り組みを推進している点が、改革が必ずしも市場機能の利用を意味していないことを証明していると説明する。近年では国有企業は共産党委員会を社内の意思決定に関与させることが義務付けられ、15年に出された国有企業改革草案には、13年に表明された市場機能に決定的な役割を与えるという言及は見当たらない。
北京駐在のある西側ベテラン外交官はロイターに、習氏にとっての最優先事項は引き続き共産党の優越性と経済社会の安定をより高めることにある、と語った。
(Michael Martina、Kevin Yao記者)