最新記事

中国共産党

中国の市場自由化は二の次? 支配強める習近平の最優先事項

2017年10月20日(金)12時02分

10月17日、中国では汚職対策から外交まで実に多くの分野で、習近平国家主席(写真)の支配力の強大さが顕著になっている。しかしそれに伴って、習氏が市場改革を推進すると期待してきた投資家や企業経営者は、落胆する事態が訪れるのを覚悟し始めた。北京で7月撮影(2017年 ロイター/Jason Lee)

中国では汚職対策から外交まで実に多くの分野で、習近平国家主席の支配力の強大さが顕著になっている。しかしそれに伴って、習氏が市場改革を推進すると期待してきた投資家や企業経営者は、落胆する事態が訪れるのを覚悟し始めた。

2期目に入ろうとする習氏は、経済政策で国家主導を前面に押し出すとともに社会の安定を重視しており、市場の自由化などもはや二の次とみなす傾向が強まる一方なのだ。

18日からの共産党大会を前に、同党の報道官は記者団に対して中国が市場の開放とアクセス拡大を追い求め続けると強調した。しかし外資系企業幹部やアナリストは、こうしたコメントにどれほど実質的な意味があるのか首をかしげている。中国駐在のある米企業幹部は「市場開放など見込めない。規律と管理の話ばかりだ」と述べた。

中国政府のあるアドバイザーは「われわれは改革を急がない。改革ペースは劇的には上がらないだろう」と語った。

はかなく消えた期待

中国分析専門家の間では当初、習氏が全面的な汚職追放を掲げ、自ら経済政策策定の責任者になったことは、強固な官僚組織の岩盤を打ち破って改革を進めようという姿勢の表れだと評価されていた。

2013年には習氏の下で共産党が経済において市場に決定的な役割を与えると約束したことも、改革期待を高める要因だった。

ところが今や、多くの専門家や企業経営者は、習氏の市場に対する信頼など本当は極めて希薄で、13年の改革表明は単に前指導部の方針を引き継いだだけだったとみている。

その後に国務院は繰り返し、世界に市場を開くと唱えてきたが具体的な措置は実施されず、外資系企業は在中国欧州連合(EU)商工会議所が名付けたような「約束疲れ」の状態に置かれている。同時に国家安全保障やサイバーセキュリティーに関する新たな規制も導入され、中国の貿易相手は不満を言うと不利に扱われる。

米コンファレンスボードの中国経済ビジネスセンターで共産党を研究しているジュード・ブランシェット氏は「過去20年から30年は、中国は経済発展のためにすべてを犠牲にしてきた。現在は別のパラダイムが出現していると考えられ、国家安全保障が主役であり、経済問題はその視点を通じて処理されている」と指摘した。

ブランシェット氏によると、真の市場改革を実行すれば、習氏がこれまでの闘争でせっかく勝ち取った権力の大半を2期目に手放すことになり、改革の実現はあり得ないという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

NATOプレゼンス強化へ、バルト海ケーブル損傷 エ

ビジネス

キャシー・ウッド氏、トランプ効果の広がり期待 減税

ビジネス

タイ、グローバル・ミニマム課税導入へ 来年1月1日

ワールド

中国、食料安全保障で農業への財政支援強化へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 2
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3個分の軍艦島での「荒くれた心身を癒す」スナックに遊郭も
  • 3
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部の燃料施設で「大爆発」 ウクライナが「大規模ドローン攻撃」展開
  • 4
    「とても残念」な日本...クリスマスツリーに「星」を…
  • 5
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 6
    なぜ「大腸がん」が若年層で増加しているのか...「健…
  • 7
    わが子の亡骸を17日間離さなかったシャチに新しい赤…
  • 8
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 9
    日本企業の国内軽視が招いた1人当たりGDPの凋落
  • 10
    滑走路でロシアの戦闘機「Su-30」が大炎上...走り去…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 4
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 5
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 6
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 7
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 8
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 9
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 10
    なぜ「大腸がん」が若年層で増加しているのか...「健…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 9
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中