中国の市場自由化は二の次? 支配強める習近平の最優先事項
10月17日、中国では汚職対策から外交まで実に多くの分野で、習近平国家主席(写真)の支配力の強大さが顕著になっている。しかしそれに伴って、習氏が市場改革を推進すると期待してきた投資家や企業経営者は、落胆する事態が訪れるのを覚悟し始めた。北京で7月撮影(2017年 ロイター/Jason Lee)
中国では汚職対策から外交まで実に多くの分野で、習近平国家主席の支配力の強大さが顕著になっている。しかしそれに伴って、習氏が市場改革を推進すると期待してきた投資家や企業経営者は、落胆する事態が訪れるのを覚悟し始めた。
2期目に入ろうとする習氏は、経済政策で国家主導を前面に押し出すとともに社会の安定を重視しており、市場の自由化などもはや二の次とみなす傾向が強まる一方なのだ。
18日からの共産党大会を前に、同党の報道官は記者団に対して中国が市場の開放とアクセス拡大を追い求め続けると強調した。しかし外資系企業幹部やアナリストは、こうしたコメントにどれほど実質的な意味があるのか首をかしげている。中国駐在のある米企業幹部は「市場開放など見込めない。規律と管理の話ばかりだ」と述べた。
中国政府のあるアドバイザーは「われわれは改革を急がない。改革ペースは劇的には上がらないだろう」と語った。
はかなく消えた期待
中国分析専門家の間では当初、習氏が全面的な汚職追放を掲げ、自ら経済政策策定の責任者になったことは、強固な官僚組織の岩盤を打ち破って改革を進めようという姿勢の表れだと評価されていた。
2013年には習氏の下で共産党が経済において市場に決定的な役割を与えると約束したことも、改革期待を高める要因だった。
ところが今や、多くの専門家や企業経営者は、習氏の市場に対する信頼など本当は極めて希薄で、13年の改革表明は単に前指導部の方針を引き継いだだけだったとみている。
その後に国務院は繰り返し、世界に市場を開くと唱えてきたが具体的な措置は実施されず、外資系企業は在中国欧州連合(EU)商工会議所が名付けたような「約束疲れ」の状態に置かれている。同時に国家安全保障やサイバーセキュリティーに関する新たな規制も導入され、中国の貿易相手は不満を言うと不利に扱われる。
米コンファレンスボードの中国経済ビジネスセンターで共産党を研究しているジュード・ブランシェット氏は「過去20年から30年は、中国は経済発展のためにすべてを犠牲にしてきた。現在は別のパラダイムが出現していると考えられ、国家安全保障が主役であり、経済問題はその視点を通じて処理されている」と指摘した。
ブランシェット氏によると、真の市場改革を実行すれば、習氏がこれまでの闘争でせっかく勝ち取った権力の大半を2期目に手放すことになり、改革の実現はあり得ないという。