低迷スーパー「ホールフーズ」を買ったアマゾンの皮算用
売場面積当たりの売上高で見ると、ホールフーズは現在も世界で最も利益率が高い食品販売企業だ。成功例に分類される店舗はきれいで明るく、店内を歩くだけで楽しい。ほとんどのライバル企業がまねできない長所だ。そうした点を再度打ち出すことにアマゾンのジェフ・ベゾスCEOが力を入れれば、競合に悩む必要はなくなるのではないか。
創業以来、ホールフーズは大卒者が多く暮らす地区に出店するという、シンプルにして賢い方針をおおむね徹底してきた。市場調査が証明するように、食料品店は低所得層が多く住む地域に出店するより、競合店があっても富裕層エリアに店を構えるほうが売り上げがいい。ホールフーズの全店舗のおよそ25%は同社の別店舗の約8キロ圏内に位置し、47%は競合するクローガーの店舗の約5キロ圏内にある。
ところがホールフーズは近年、成長を要求される上場企業としての必要性に迫られ、あまりに急速に店舗網を拡大させてきた。そのせいで時に立地選びに失敗し、地元の好みに合わない店作りをしている。ニューオーリンズのブロード・ストリートという意外な場所で成功を収めたのは、ここでは出店前に綿密なリサーチをしたからだ。
「ジョンはずっと株式上場を後悔していたと思う」。昨年までホールフーズの米太平洋岸北西部地域社長を務めたジョー・ロゴフは、CEOのマッキーについてそう語る。「私は後悔した。ホールフーズとウォール街の両者が、会社は永遠に成長を続けるという夢物語を描いた。だから上場することにしてしまったのだろう」
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不振店の閉鎖に踏み切る?
もう1つの問題はスペースだ。ホールフーズの店舗の大半は売場面積が約4500平方メートルに及ぶ。ほとんどの場合、不動産はリース物件だから、新規出店には巨額のコストがかかる。
その回収には安定した来客数の確保が不可欠だ。だが競合が加速するなか、ホールフーズの来客数は1年に3%、人数にして1400万人ずつ減少。既存店売上高は昨年、2000年代後半のグレート・リセッション(大不況)以来最悪の2.6%減を記録した。
それでも業界全体としてみれば、ホールフーズの業績は上々だ。利益率は2.8%で、業界平均の1.7%を大幅に上回る。
いまホールフーズがやるべきことは、業績不振店を閉めること。その多くは、株主の圧力を受けて急いで作った店だ。「ホールフーズには、生産性の極めて高い店が数百ある」と、不動産コンサルティング会社マクミランドゥーリトルのニール・スターンは言う。「業績不振店は100店程度だろう。数合わせのために開いた店だ」
不採算店を閉じれば、ブランドの再強化に力を入れられたかもしれない。ただ、それをうまくやるには、長期的なビジョンと、目先の利益をある程度犠牲にする覚悟が必要だ。ホールフーズの株主は、それを容認しなかった。マッキーは、独自のスタイルを貫くスーパーをウォール街に売り込もうとして、自らの手を縛ってしまった。