低迷スーパー「ホールフーズ」を買ったアマゾンの皮算用
だが、アマゾンに身売りしたことで、マッキーはホールフーズを救えるかもしれない。「(マッキーは)自由と、大富豪の後ろ盾を得た」と、スターンは語る。投資家はベゾスの手腕を大いに信頼しているから、ホールフーズが値下げに踏み切り不採算店を閉鎖して利益が一時的に落ち込んでも、株主は大騒ぎしないだろうとスターンはみる。
アマゾンは「ホールフーズに、今までやってきたことを続けてほしいと思っている」と、関係筋は言う。「(ベゾスが13年に買収した)ワシントン・ポスト紙のように、株主やオーナーの圧力から解放されて、自由で斬新なビジネスを望んでいる」
とはいえ、近隣の小規模農家から仕入れた生鮮品を、通常のスーパーよりも2~3割高い価格で売ってきたホールフーズのビジネスモデルは、徹底的な効率重視でライバルを蹴落としてきたアマゾンとは正反対に近い。
アマゾンの登場によって廃業に追い込まれた個人書店や小規模出版社は少なくないし、アマゾンのベンダー(販売業者)は、ばか高い販売手数料を取られて激怒している。「私が知るアマゾンのカルチャーは、人間味がなく功利主義的だ。ベンダーは骨までしゃぶられ、吐き捨てられる」と、ロゴフは言う。「ベゾスがホールフーズのカルチャーを守ってくれるといいんだが」
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身売りでイメージを一新
ホールフーズの関係者からは、ルーツに立ち返ってやり直そうという声も聞かれるが、それは決して容易ではない。ホールフーズのルーツであるオーガニック自然食品の市場は、以前よりもずっと競争が激しくなっている。それなら「大人の会社」らしくコストを削減して、集中管理を強化しては? 「結構だが、それでは消費者をワクワクさせるという、昔ながらの魅力が失われてしまう」と、スターンは語る。
値下げもそんなに簡単ではない。「昔は、『ホールフーズは高い。でもその価値はある』という客が大半だった。でも今は『ホールフーズは高い。ぼったくりじゃない?』という人が増えた」とスターンは言う。「そう思われてしまったら、値下げしただけでは、信頼を回復するのは難しい」
その点、アマゾンによる買収は、大きなイメージチェンジになるだろう。アマゾンの成長見通しにとっても、ホールフーズの買収はプラスになる。「食品は小売業でも世界最大のカテゴリーだ」と、スターンは言う。アマゾンは7年前に生鮮食品配送サービス「アマゾンフレッシュ」を開始したが、アメリカではまだ5都市でしかサービスを提供できていない。