アマゾンは独禁法違反? 「世界一」ベゾスにいよいよ迫る法の壁
アメリカの世帯の約半数がアマゾン・プライム会員との調査結果が MICHAELA REHLE-REUTERS
<ニューズウィーク日本版8月29日発売号(2017年9月5日号)は「王者アマゾン 次の一手」特集。暮らしと産業を変える巨大企業アマゾンを生んだ鬼才ジェフ・ベゾスの挑戦と「壁」に迫った。この特集から、同社の独禁法違反の疑いに関する記事を転載する>
アマゾンのCEOジェフ・ベゾスが、ついに世界一の富豪になった。
フォーブスのリアルタイム世界長者番付によると、7月27日にアマゾン・ドットコムの株価上昇で、総資産額が906億ドルに。これでベゾスはマイクロソフトのビル・ゲイツを抜いて「世界一の富豪」になったわけだが、栄光は長く続かなかった。アマゾン株はその後下落に転じ、同日中にゲイツがトップに返り咲いたからだ。
だが、ベゾスはむしろ胸をなで下ろしたことだろう。小売業界におけるアマゾンの圧倒的な規模と支配力は独禁法違反ではないかと、監視の目が強まっているからだ。
オンラインショッピングを基幹事業にするアマゾンだが、今年6月には自然食品スーパーの米ホールフーズ・マーケットの買収計画(137億ドル)を発表し、食品小売業への本格参入を決めた。米連邦取引委員会(FTC)は8月23日にこの買収を承認したが、これでアマゾンとベゾスへの風当たりがやむとは限らない。
実際、独禁法違反の疑いに対する厳しい目は、共和・民主の両党から向けられている。
「ベゾスは私が独禁法で詰め寄ると思っているだろう」。昨年5月、共和党の大統領候補として選挙中のドナルド・トランプは、テレビ番組でこう語った。アマゾンは市場を独占し過ぎており、「独禁法の大問題を抱えている」と警告した。さらに、ベゾスは買収したワシントン・ポストを政治利用して税金逃れをしているとも語りながら、繰り返し根拠なく、時にそれとなく、時にあからさまに非難した。
一方の民主党議員も、IT業界を中心にした独禁法問題に情熱を燃やしている。グーグルの影響力にも目を光らせるコーリー・ブッカー上院議員は、アマゾンのホールフーズ買収が消費者の利益を損ねる可能性を調査するために、黒人議員連盟の同僚を結集したいとしている。食品スーパーの統合が雇用に与える悪影響についての懸念を語り、買収と承認には「高いハードルを設けるべき」との考えを示していた。ホールフーズ買収終了後も、追及の手を緩めないかもしれない。別の民主党員であるデービッド・シシリーニ下院議員も7月に下院司法委員会委員長に書簡を送り、ホールフーズ買収計画に関する公聴会の開催を求めている。監視の目は続きそうだ。