孫政才失脚と習近平政権の構造
習近平が反腐敗運動を展開するために有利となる条件でありさえすれば、胡錦濤はすべて譲歩した。それを優先して、チャイナ・セブンを選んだのである。
ただし、チャイナ・ナインにあった「国家副主席」の職位を外し、「精神文明(イデオロギー)」に関する職位を残すことにしている。これは「法輪功問題」のためでなく、「中国共産党の一党支配体制が危うくなっている」ことへの懸念からである。その証拠に、習近平政権になってからの言論弾圧は、尋常ではない。
これが習近平政権「チャイナ・セブン」の基本中の基本だ。
習近平はなぜ法輪功弾圧組織を格下げしたのか
法輪功弾圧組織としての中共中央政法委員会を格下げしたのは、そのトップにいる江沢民が数多い国において提訴されているからである。中国がグローバル化すればするほど、その事実は中国という国家に重くのしかかってくる。そのため1999年6月10日に法輪功弾圧のために江沢民が設置した「610弁公室」の責任者・李東生を、習近平は政権が始まって間もない2013年12月に拘束、逮捕し、この弁公室を撤廃した。
江沢民と曽慶紅がいなければ、こんにちの習近平はいない
日本の中国報道は、どうしても全てを「権力闘争」と結び付けないと日本国民の目を惹きつけることができない(新聞が売れない、テレビの視聴率が落ちる)と考えているのか、実に現実を歪曲した報道が目立つ。中共政権の基本を理解していないのだ。
このままでは日本の国益をさえ損ねるので、少なくとも以下のことを指摘したい。
まず江沢民とその大番頭だった曽慶紅を習近平の「政敵」と位置付けるのは、根本的に間違っている。
胡錦濤政権の第一期時代(2002年~2007年)、上海に戻った江沢民は、なんとしてでも「胡錦濤・温家宝体制」を崩してやろうと、自分の腹心の上海市書記・陳良宇を次期中共中央総書記&国家主席に就任させるべく画策していた。それを知った胡錦濤は、陳良宇を腐敗問題で逮捕すべく、チャイナ・ナイン内の複雑な人間関係を活用して摘発に成功する。2006年9月のことである(詳細は『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』)。
手駒を無くした江沢民は激怒し、大きなショックを受ける。