ヘンリー王子が語った母の死と英王室(前編)
20年近く感情を「押し殺していた」ことを認めたヘンリーは、今や自分が感情豊かであるのを世間にアピールしたがっている。「情熱が過ぎる場合もある」と、王子は笑顔で言った。「以前はそれでトラブルになった。口先だけで行動しようとしない人間が嫌いだ、という理由もある」
ヘンリーが「行動」しようと考えている多くのことの1つは、イギリス君主制の見直しだ。「君主制は良い方向に向かう力だ」と言う。「女王が60年間以上かけて築いてきた前向きな雰囲気を維持したいが、女王の在り方をそのまま引き継ぐつもりはない」
いずれ父親のチャールズが国王となり、次は兄ウィリアムが継ぐ。若い世代のウィリアムの人気とヘンリーの魅力とエネルギーは、ダイアナの死によって徹底的なダメージを受けたかに思えた英王室のブランドを復活させるのに役立ってきた。
「イギリスの君主制の現代化に取り組んでいる。自分たちのためではなく、国民の大義のために......国王や女王になりたいと思う王室の人なんているだろうか。いないと思う。でも私たちはその時が来たら義務を果たす」
女王の公務の大半を占める慈善事業を若い世代が引き継ぐ際は、より焦点が絞られるだろう。昨年まで、女王は600件を超える慈善事業に関与していた。王室全体では約3000件だ。
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母親のレガシーを前進させる
ウィリアムが国王になる時代には、この数字は大きく減っているはずだ。ヘンリーに近い筋は「彼らはいくつかの慈善事業を選び出し、活動内容を完全に調査してからきちんと関わっていきたいと考えている。彼らはセレブ集団(の活動)と思われるのを嫌う」と言う。ヘンリーも同意見だ。「私たちは時間を賢く使う。どこかに現れて握手して、それで終わりにしたくない」
自分にとって大事な役割は3つあると王子は考える。まずは母ダイアナのレガシーをたたえ、前進させることだ。「母は自分がやり遂げられなかったことを、私にやらせたいだろうなと直感的に感じている」
HIV感染に対する根拠のない恐れが蔓延していた時期、ダイアナはエイズ患者と触れ合う写真を撮影させ、世間の偏見を変えるのに役立てた(ダイアナはインタビューで「私は人々の心の王妃でありたい」という忘れ難い言葉を残した)。
昨年12月、カリブ海のバルバドスを訪れたヘンリーは、歌手リアーナと一緒にカメラの前でHIV検査を受けた。06年、同じく幼い頃に母親を亡くしたアフリカ南部のレソトの王子と共にチャリティー財団「センテバレ(現地語で「忘れな草」の意味)」を設立。エイズ感染率が世界2位のレソトの子供を支援する組織だ。
さらに世界中で地雷や不発弾を撤去しているイギリスの団体ヘイロー・トラストも支援し、母親の「世界から地雷をなくす」活動を受け継いでいる。
2つ目の役割は、91歳の女王を支えること。女王は自分の公務のいくつかを徐々に孫に肩代わりさせている。
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[2017年7月 4日号掲載]