ヘンリー王子が語った母の死と英王室(前編)
大切にしているのは「普通の生活」を維持することだ。「母は兄と私に、積極的に普通の人々の生活を見せてくれた。おかげで今も現実から完全に切り離されてはいない。兄も私も、けっこう普通の生活をしている。買い物にだって自分で行くんだ。将来、運よく子供に恵まれたら、彼らにもそうさせたい」。そして「たとえ国王になっても、自分で買い物に行く」。
「普通」と「神秘性」の両立
普通でありたいという彼の思いは恋愛にも反映されている。恋人のメーガン・マークルは有名女優だがアメリカ人で、活発に発言するフェミニストで、離婚歴もある。まあ、イギリス王室の配偶者らしくはない。
しかし、そのマークルや彼女との関係を守るために王子は頑張っている。昨年11月にはケンジントン宮殿が、王子の要請を踏まえて声明を発表した。マークルに対する「一連の嫌がらせや、ある全国紙の中傷、人種をにおわす発言やソーシャルメディア上での露骨な性差別、人種差別」に抗議し、「王子はマークルさんの安全を懸念しており、自分が彼女を守れずにいることに深く失望している。まだ数カ月の交際をこんなに騒ぎ立てるのは正しくない」とする声明だった。
王子に近いある人物によれば、彼はプロポーズを急いでいないらしい。「2人はうまくいっているが、長い付き合いではない。極めて特殊な環境で普通の恋愛関係を続けていけるのか、2人で模索していく必要がある。年内に何か動きがあるとは思えない」
王室が「普通」になり過ぎると、その神秘性が薄れてしまう。そんな心配はないのだろうか?「巧みなバランスが必要だ」とヘンリーは言う。「神秘性は薄めたくない......英国民も世界も、そうした存在を欲しがっている」
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宮殿暮らしの身で「普通」になりたいなどと言えば、笑われるのは承知している。何しろ外出時はリムジンで顔を見せないし、いざとなれば何でも従僕が取り寄せてくれる。
その気になれば軍の司令官にも直訴できる。ヘンリーは軍務でアフガニスタンに派遣された際、安全上の理由で撤退を命じられても残留を希望して抵抗した。最近ではロンドンの自然史博物館に頼んで、閉館後にマークルと一緒に恐竜の巨大な骨格を観賞した。
王子が普通の男であっては困ると思う人が多いのも承知している。公式行事で彼と言葉を交わした人々は誰もが興奮し、中には「これぞ本物の王子だ」と歓喜する人もいる。
ヘンリーには訪問先で出会う人々と心を通わせ、障害を乗り越えようとするあらゆる世代、あらゆる立場の人々に手を差し伸べる生来の資質があるといえる。