最新記事

インドネシア

バドミントン王国インドネシアの憂鬱 国際大会で決勝トーナメント進めず 

2017年6月13日(火)16時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

インドネシアの応援団。昨年のリオ五輪、バドミントンの試合会場で Mike Blake‐REUTERS

<「バドミントンの女王」と呼ばれるスシ・スサンティを生んだインドネシアが国別対抗戦で惨敗。スサンティの頃より恵まれ過ぎか、競り負けるのは女子より男子、等々、国を挙げての敗因分析が始まった>

バドミントン大国、国技バドミントン、バドミントン界の女王、初の五輪金メダルはバドミントン。これは全てインドネシアのバドミントンにまつわることがらである。東南アジアの大国、世界第4位の人口を擁し、世界最大のイスラム人口を抱えるインドネシアでは国民に最も人気のあるスポーツがサッカーとバドミントン。空き地があれば男の子たちは裸足でボールを蹴り、女子や家族でシャトルを打ち合う姿は、インドネシアのどこにいってもみられる日常の光景である。

インドネシアが予選リーグ敗退

そのインドネシアのバドミントン界が大きく揺れる"事件"が起きた。5月21日から28日までオーストラリアのゴールドコーストで行われた世界国別対抗バドミントン選手権(スディルマンカップ2017)でインドネシアがグループ最下位となり予選リーグで敗退、決勝リーグに進むことができなかったのだ。これは1989年の第1回大会以降初めての出来事でインドネシア国民は大きな衝撃を受けた。

【参考記事】インドはなぜ五輪で勝てない?

インドネシアでも国技のバドミントンの国際試合であり、そもそも「スディルマンカップ」のスディルマンはインドネシアの代表的バドミントン選手、ディック・スディルマンの功績にちなむもので、インドネシアにとっては負けるに負けられない大会の一つで、試合は民放テレビ局が生中継して全国で国民が固唾を飲んで観戦していた。

バドミントン界の女王が謝罪

こうした中での予想外の事態に地元紙は「バドミントン史上最悪の結果」「青年スポーツ省がバドミントン協会(PBSI)関係者を査問」などと厳しいトーンで伝えた。

【参考記事】「金」じゃなくてもOK? 変わる中国のスポーツ観

インドネシア選手団のアハマド・ブディハルト代表はPBSIのホームページに「全てのインドネシアの人々に謝ります。全く経験したことのないショッキングな結果となってしまいました。協会関係者と今回の結果をよく分析します」とのコメントを掲載した。

さらにPBSIのテクニカルチーフであるスシ・スサンティさんも「選手一人一人は最大限の努力をした。その結果はきちんと受け入れなければならない。私個人としてはこの結果について謝罪します」とコメントした。

【参考記事】佐藤琢磨選手のインディ500優勝は大変な快挙

スシ・スサンティさんは、1971年に生まれ15歳でインドネシアのナショナルチームに抜擢され、1992年のバルセロナ・オリンピックで優勝、インドネシアに初の金メダルをもたらした国家的英雄だ。ワールドカップ、ワールドグランプリでそれぞれ6回優勝し、全英オープンも4度制覇、「バドミントン界の女王」と称えられる。その女王が国民に謝るとは、インドネシアにとっていかにこの敗北が深刻なものであるかを裏付けている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中