中国は中朝同盟を破棄できるか?
中国は決して自国の東北地方(黒竜江省、遼寧省、吉林省)が北朝鮮の核実験で放射能汚染されることを容認することはできない。
どの国も中国を追い込むことはできず、ひとたび判断ミスを起こしたら、中国の決心と爆発力は、大きな代償を支払わせることになるだろう。(ここまで引用)
おおむね、このような内容で、タイトルの割には激しく「中朝条約を破棄すべきか?」というところまで直接踏み込んだ表現をしていないが、「破棄すべきではないか」という中国の姿勢を中国共産党系の環球時報が表面化させた意義は大きい。
中朝軍事同盟破棄論は2003年から出ていた
筆者は「その昔」、中国政府のシンクタンク中国社会科学院の社会学研究所で客員教授&研究員を務めていたことがあるが、それが終わる頃の2003年、同じ中国社会科学院の「世界経済と政治研究所」の学者が「中朝条約の第二条(参戦項目)を削除すべきではないか」という論文を出していた。
中国政府のシンクタンクではあるが、必ずしも政府からのトップダウンの研究ばかりではなく、胡錦濤政権時代は(2008年までは)、割合に自由な意見を中国政府に対して提案する形の論文が許されていた。筆者の研究室は北京の北京国際飯店の二軒隣りにある本部の10階にあったが、たしか「世界経済政治研究所」は、その下の階にあったように記憶する。
エレベーターや食堂などで一緒になったりなどして、この論文に関して話し合ったこともある。
それは中朝条約破棄ではなく、中朝条約の第二条の「参戦項目」を削除して中朝軍事同盟から逃れないと、中国の国益に反するし、国連安保理常任理事国なので、そこにおける決議に支障を来して、国際社会における中国の立場を損ねるというものだった。
以来、中国の内部では、中朝軍事同盟を破棄すべきか否かというのは、そう突飛な、口にしてはいけないタブーのような存在ではなくなってきていた。
中朝軍事同盟を破棄したら、何が起きるか?
大きく分ければ、中国はいま北朝鮮に強烈な二枚のカードを持っている。
一枚目は前のコラムで書いた「断油」。すなわち北朝鮮への石油の輸出を完全に断つことだ。
二枚目が、この、中朝軍事同盟の破棄である。
習近平政権になってから、ただの一度も中朝首脳会談を行っていないので、事実上、中朝関係は終わっているに等しい。それでも2016年7月11日には、互いに祝電だけは送っている。皮一枚のつながりだ。最後に望みをかけてみたのかもしれない。