トランプと習近平の「蜜月」 アジア各国は「米中G2」を疑心暗鬼
とはいえ、長年の同盟国は、米政府がどこまで後ろ盾として動いてくれるか、いぶかる向きもあるだろう。
トランプ大統領が北朝鮮問題の対応で習氏の協力を得ることに集中し、「米中によるG2的な体制」が生まれれば、日本や韓国は影響力を失いかねない、と英王立統合防衛安全保障研究所のシャシャンク・ジョシ氏は指摘する。
「トランプ氏の中には、反発しあう(2つの)本能があり、同氏を同時に正反対の方向に押しやっている」と、ジョシ氏は語る。
「彼のナショナリズムは、中国と競争する方向に彼の背中を押す。しかし、彼の交渉者としての本能や、個人的な影響力への寛容さ、強いリーダーへの好意は、習氏の方向に彼を後押ししている。習氏が北朝鮮で結果を見せられるなら、なおさらだ」
ただ、不動産デベロッパーとしての交渉力を自慢してきたトランプ大統領は同時に、中国への姿勢は取引的なものだと明確にしている。国家安全保障面で大統領の最優先事項となっている北朝鮮問題で、中国の協力を得ることに集中するあまり、見返りに重要な貿易問題で中国政府への圧力を弱めることを公式の場で約束すらした。
とはいえ、トランプ大統領の側近には、北朝鮮の核とミサイル開発を制御するために、中国が十分な働きをするかを疑う向きもある。経済的なライバル同士の雪解けは、習主席が北朝鮮問題で成果を出せなければ、消え去ると分析する専門家もいる。
南シナ海問題
トランプ大統領のアジア戦略のヒントを得ようと、東南アジア諸国の指導者たちは大統領の発言を注意深く分析している、とシンガポールを拠点とするISEASユソフ・イシャク研究所のイアン・ストーリー氏は語る。
「ほとんどの指導者は、穏やかで協力的な米中関係を歓迎するだろう。だが、南シナ海の領有権紛争などの問題で、トランプ大統領が習主席にフリーハンドを与えるようなそぶりを少しでも見せれば、深刻な懸念を持つだろう」と同氏は指摘する。