トランプ政権、北朝鮮ミサイル発射の制裁に手詰まり感
2月12日、トランプ米大統領(写真)は選挙期間中、北朝鮮に対してより強硬な態度を取ると表明していたが、前週末の弾道ミサイル発射後の公的な反応は抑制されたトーンにとどまった。ワシントンで10日撮影(2017年 ロイター/Joshua Roberts)
トランプ米大統領は選挙期間中、北朝鮮に対してより強硬な態度を取ると表明していたが、前週末の弾道ミサイル発射後の公的な反応は抑制されたトーンにとどまった。これで浮き彫りになったのは、米国が北朝鮮の核開発を止める有効な手段をほとんど持ち合わせていないという事実だ。
トランプ政権内では現在、北朝鮮への追加制裁からミサイル防衛力の強化を見せつけるといった措置まで、いくつかが検討されている。しかしどれもオバマ前政権が策定した選択肢の二番せんじの域を出ていないように見える。
歴代の米政権が試みてきた中国を通じて北朝鮮の行動を抑えるというやり方も、はかばかしい効果を発揮していない。
より思い切った対策としては北朝鮮への直接的な武力行使、もしくは直接交渉が考えられる。とはいえ武力行使は周辺地域を巻き込む戦争に発展するリスクがあり、交渉は北朝鮮の思うつぼであることから、両対策とも現実的な検討課題にはならず、成功も覚束ないだろう。
米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のアジア専門家、ボニー・グレーザー氏は「トランプ氏が選べる手段は限られている」と指摘した。
トランプ氏は北朝鮮のミサイル発射を受けて安倍晋三首相との共同記者発表に応じ、「私が皆さんに完全に理解してもらいたいのは、米国が偉大な同盟国である日本を100%支持するということだ」とだけ発言。北朝鮮への直接的な言及はなく、具体的な報復計画も示さなかった。
この問題についてトランプ氏がいつものようにイッターに強い口調のメッセージを投稿する可能性は残されている。しかし一部の専門家は、比較的おとなしい発言をしているのは、トランプ氏に北朝鮮の誘いに乗って実行が難しい対抗措置を安易に発表しないよう、側近が必死に説得している表れではないかとの見方を示した。
中国の出方
オバマ前政権は北朝鮮に対して、段階的に制裁と外交圧力を強めつつ、実質的には同国指導部の出方を見守る「戦略的な忍耐」と呼ぶ政策を遂行していた。これに対してトランプ氏側近は、現政権はもっと攻めの姿勢を取ると話しているものの、実際にどうするかはあいまいなままだ。