最新記事

航空業界

LCCが殺到! 関空が描く「アジアハブ」の野望

2017年2月28日(火)11時40分
中川雅博(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

関西国際空港で1月末に開業した新たなLCC専用国際線ターミナルは、韓国や台湾、中国の若者であふれている(記者撮影)

あちらこちらで飛び交うのは中国語や韓国語。日本人はほとんど見掛けない。関西国際空港で今年1月28日にオープンしたばかりのLCC(格安航空会社)専用の国際線ターミナル「第2ターミナルビル(国際線)」は、アジアの若者でごった返している。2月初旬の夕暮れ時、ほとんどが韓国や台湾、中国の若い男女と見受けられた。

それもそのはず、現在このターミナルを利用する唯一の航空会社であるLCCのピーチ・アビエーションは、関空から韓国のソウルや釜山、台湾の台北や高雄、香港、上海に毎日定期便を飛ばしている。しかも同社便の外国人比率は7割を超えているのだ。さらに3月1日からは中国のLCC、春秋航空が新ターミナルからの運航を始める。多くの中国人でにぎわうことになりそうだ。

国内初の空港民営化からまもなく1年

関空は伊丹空港とともに国内初の空港民営化案件として大きな注目を集め、昨年4月にオリックスと仏空港運営会社のヴァンシ・エアポートなどによる合弁会社「関西エアポート」が空港運営権を取得した。まもなく民営化1周年を迎えようとしている。

関空に就航する便数はここ数年、LCCが牽引する形で急増中だ。昨年10月から今年3月までの国際線の冬期ダイヤでは、過去最高の週1131便が運航する。そのうちLCCは週390便で全体の34.5%。5年前はわずか7.5%だったことを考えれば驚異的な伸びだ。

toyokeizai170228-1.jpg

関西エアポートのエマヌエル・ムノント副社長は、民営化後の関空に手応えを感じている(記者撮影)

関西エアポートのエマヌエル・ムノント副社長は「アジアから飛んでくるLCCのハブになっていきたい」と鼻息が荒い。

最も便数が多いのは週82便を運航するピーチだ。同社は国内線も展開しているため、関空が乗り継ぎ拠点となっている。今年6月末からはマレーシアのエアアジアXがLCCとして初めて関空―ハワイ・ホノルル線を就航する。同社はマレーシアのクアラルンプールからも関空に路線を張っており、「関空が太平洋横断のハブになるための第1ステップになる」とムノント副社長は満足げだ。

ムノント副社長の出身母体であるヴァンシ・エアポートは世界6カ国で34空港を運営。ムノント氏自身も多くの空港にかかわってきた。「たとえばヴァンシが運営するポルトガルのリスボン空港は欧州LCCの大手、イージージェットのハブだ。生かせる知見は十分にある」。他の空港での成功モデルを関空にも取り入れようとしている。「ホテルや飲食店、小売店など、乗り継ぎ客に便利なサービスをより充実させていきたい」。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 7
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中