フォード工場建設撤回、メキシコ経済へのリスク浮き彫りに
1月6日、米自動車大手フォード・モーターが、メキシコ中部サンルイスポトシ州に16億ドルを投じて工場を建設する計画を撤回したことで、トランプ次期米大統領が掲げる政策がメキシコ経済に及ぼすリスクが浮き彫りになった。写真は工場の建設予定地、4日撮影(2017年 ロイター/Christine Murray)
米自動車大手フォード・モーター
また、顧客基盤の拡大を期待していた関連する部品供給業者の間でも驚きが広がっている。
米ゴム化合物メーカー、プリファード・コンパウンディングの現地法人幹部は、多くの自動車部品メーカーがサンルイスポトシ州のフォード新工場の操業を見込み、事業拡大に乗り出していたと指摘。同州産業の自動車業界への依存度は「優に70%」に達しているという。
同幹部は「(フォードの撤回の決定は)地元経済に大きな影響を及ぼすだろう」と語った。同幹部によると、地元経済に及ぼす影響は今後5年間で数十億ドルに達する可能性すらある。地元当局者はフォードの決定が及ぼす経済的な影響をなお分析していると明らかにした。
トランプ氏は通商関係を刷新し、米国に雇用を取り戻すと宣言しており、メキシコ経済が被る打撃は今回が始まりにすぎないかもしれない。
フォードは今回の撤退理由について、同州でも製造を予定していた小型車に対する需要が北米で減退していることを挙げた。ただ、トランプ氏は昨年11月の大統領当選の数カ月前から、メキシコ事業に関してフォードを激しく批判していた。
トランプ氏は5日には、トヨタ自動車<7203.T>のメキシコ新工場から米国に輸出される車両を対象に「国境税」を課すと警告。トランプ次期政権のメキシコ産業に対する全面攻撃を巡る懸念が高まっている。
フォードの建設撤回を受け、同社の工場建設予定場所は既に、経済的な約束を失った不毛の地と化している。油圧ホース請負業者のフェルナンド・ロサレスさん(28)は「今や墓地のようだ」と話した。