最新記事

第2次大戦

意外とトランプ支持者にウケた?真珠湾訪問「ショー」

2016年12月28日(水)16時05分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

真珠湾攻撃を生き残った米退役軍人を抱擁する安倍とオバマ Kevin Lamarque-REUTERS

<「現職初」の触れ込みは「4人目」に訂正され、アメリカのリベラル派からは「慰霊の対象はアメリカだけじゃない」と批判されたが、安倍晋三首相の真珠湾訪問を喜んでくれた人たちもいた>

 真珠湾攻撃から75年目の12月27日、安倍晋三首相はオバマ米大統領と共に日本軍が沈没させた戦艦アリゾナの上に作られたアリゾナ記念館で「歴史的な」慰霊と演説を行った。安倍の演説は反省や謝罪を回避しながら、亡くなった兵士の一人ひとりに「母がいて、父がいた」などと情緒に訴えるもので、ある日原爆が「空から落ちてきた」というフレーズで始まったオバマの広島演説と対をなすもの。中国外務省の華春瑩副報道局長はかねて今回の訪問を、誠意ある反省を伴わない「ショーの要素が大きい」と批判していた。

【参考記事】安倍首相の真珠湾訪問を中国が非難――「南京が先だろう!」

「現職首相として初」の真珠湾訪問と日本政府が電撃的に発表したときから、この訪問はパフォーマンス的な要素が強かった。その狙いは、任期切れ間近のオバマにおいては、日米同盟の強化を自らの功績として象徴的な形で世界にアピールすること。一方の安倍は、来年1月20日以降、在日米軍経費の負担増や日米安保の見直しを主張するドナルド・トランプ新大統領と交渉することになる。今のうちに日米関係の重要性を見せておきたかった。

「オバマより安倍のほうが真摯だ」

 真珠湾攻撃を経験したアメリカの退役軍人などとの抱擁の場面は、愛国主義的なトランプ支持者には効果的だったかもしれない。トランプ政権に近い右派ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」は、安倍の演説から次のフレーズを論評抜きで報じた。「私は日本国総理大臣として、この地で命を落とした人々のみ霊に、(中略)永劫の哀悼の誠を捧げます」

 驚くのは続くコメント欄。「安倍はこれを来るべきトランプ政権に対する交渉材料にするつもりだ」という皮肉な見方もある一方、「真摯な謝罪だ」「退役軍人の前で跪く姿はオバマより安倍のほうに誠意を感じた」「両国はお互いに何も負い目などない。あるのは永遠の友情だけだ」など好意的(無批判?)なコメントが続く。

【参考記事】9月2日も終戦記念日――今夏、真珠湾の記念館を訪れて
【参考記事】パックンが広島で考えたこと

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米中堅銀行、高まる投資銀事業の重要度 M&A活況で

ワールド

トランプ氏、シカゴでの不法移民摘発計画を再検討 情

ワールド

トランプ次期米大統領、就任式前日にワシントンで大規

ワールド

TikTok、米でサービス再開 トランプ氏は禁止法
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明らかに【最新研究】
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 8
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    メーガン妃とヘンリー王子の「山火事見物」に大ブー…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 10
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中